きっかけは「普通の提案」が刺さらなかったこと
――北島さんが所属するパートナー推進課は、どのような業務をされているのでしょうか?
北島:V・ファーレン長崎を応援してくださる企業や仲間を集めるのが主な業務です。クラブの収益を上げるため、長崎県内だけでなく全国からさまざまな軸で応援・支援してくださる企業を増やそうと活動しています。パートナーシップというと、広告露出や気持ちでの支援だと思われがちです。しかし、クラブとしてお金をいただく以上、その企業様の課題解決につながるような取り組みを一緒に考え、提案することを心がけています。

――今回お話を伺うゼンリン様との取り組みも、その課題解決の一環だったのでしょうか?
北島:ゼンリン様が観光型MaaS(Mobility as a Service)アプリ「STLOCAL」の展開のために、誘致企業として長崎にいらっしゃったのをきっかけにパートナーシップを提案させていただきました。当初は地図情報の会社と伺っていたので、スタジアムに企業ロゴを露出するという、一般的なパートナー提案をしました。
しかし、この提案はあまり良い反応をいただけませんでした。ゼンリン様が求めていたのは、長崎で「STLOCAL」のアプリダウンロード、サービス利用を促すことです。その目的に対し、広告露出だけでは満足いただけませんでした。
――一度は実施に至らなかったわけですが、そこからどのような形に内容を変えたのでしょうか。
北島:「STLOCAL」はサービス名に含まれる「ストロール(stroll:散歩)」や「ローカル(local:地域)」という言葉が示すように、地域の観光周遊にメッセージ性を込めて事業を広めていきたいという思いがあります。その思いをV・ファーレン長崎がハブになってファンやサポーター、ファンやサポーターが試合後に長崎を周遊するストーリーを実現できるプランを提案し、実施に至りました。
マスコット起点に観光周遊を促す
――では、実際に採用されたプラン内容について教えてください。
北島:V・ファーレン長崎のマスコット「ヴィヴィくん」に、STLOCALのアプリマークロゴを靴に入れてもらいました。そして、グループ会社である長崎ヴェルカのマスコット「LUCA」の靴にもロゴを掲載しました。ヴィヴィくんは長崎だけでなく全国にも活動の場を広げています。マスコットの靴にロゴを入れ、活動内容の発信とともにSTLOCALの認知を広めることで、サービスとの親和性のあるパートナーシップになると考えました。

――その靴にロゴを入れるアイデアが、ゼンリン様から好評だったのですね。
北島:ただ単にロゴを露出するだけでなく、マスコットがロゴを掲げて歩くことで、観光周遊というメッセージを具体的に伝えられる広告になると考えました。当初はV・ファーレン長崎単独での話でしたが、せっかくなら長崎ヴェルカでもお願いしたいと思い、長崎ヴェルカの営業メンバーとも連携して、ゼンリン様が成し遂げたい構想に寄り添った提案ができたのが成功の鍵だったと思います。
――マスコットキャラクターが、企業様の課題解決の重要な鍵になったのですね。
北島:そうですね。STLOCALの「ス」の文字は、歩く人の足のようにも見える象徴的なロゴです。ヴィヴィくんがこのロゴを靴に付けるだけでなく、自らの体で「ス」の文字を作るポーズを披露すると、ファンやサポーターの方々も一緒に写真を撮ってSNSで拡散してくれました。文字ひとつから始まったこの取り組みが、これほど多くの人々に広まったことは、私たちも驚きでした。