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F1女子急増、世界8億人が熱狂。人気再燃の必然とワールドカップ前夜の示唆

なぜ今、30代や女性に刺さるのか

 F1人気の再燃を支えているのは、かつてのファン層の復帰ではなく、新たに参入した30代や女性を中心とする層である。なぜ彼らが今、F1に惹きつけられているのか。その理由を整理すると、いくつかの要素が浮かび上がる。

ノスタルジーと新鮮さの両立

 30代の多くは、子どもの頃にセナやシューマッハの名前を耳にして育った世代である。テレビや雑誌で垣間見たF1は、憧れと遠い存在が入り混じった記憶として残っている。社会人となり可処分所得を得た今、再び触れることで「昔の記憶が現代的にアップデートされて蘇る」という感覚を味わえる。この“懐かしさと新鮮さの融合”が、他のスポーツにはない独特の体験を提供している。

人間ドラマ化によるストーリー消費

 Netflixの『Drive to Survive』は決定的な転機となった。単にマシンが速さを競うのではなく、ドライバーの生き様、チーム内の葛藤、勝負の裏側を「物語」として提示したことで、F1はスポーツからドラマへと変貌した。感情移入のきっかけを得たファンは、レース結果以上に人間関係のダイナミクスに熱狂するようになった。これは女性や30代の視聴者が共感を覚えやすい要素である。

体験消費との親和性

 30代の消費スタイルを特徴づけるのは「モノよりコト」である。旅行やフェス、体験型イベントに価値を置くこの世代にとって、マイアミやラスベガスといった都市型グランプリは格好の余暇消費の対象となる。実際、米国での観客の平均年齢は32歳とされ、F1は他のメジャースポーツに比べても若い層を取り込むことに成功している。

デジタル接点の拡大

 かつては全レースをリアルタイムで視聴しなければファンとは言えなかった。しかし今はSNSのハイライトやYouTubeの公式動画を通じて、短時間でも気軽に参加できる環境が整った。2025年シーズンの公式ハイライト動画は累計で2億回以上再生され、米国だけで3,000万回以上の伸びを見せている。30代にとって、忙しい日常の合間に“カルチャー現象としてのF1”を消費できる導線が整っていることは大きい。

 以上の要素が重なり、F1は「おじさんの趣味」から「30代と女性が夢中になるカルチャー」へと再定義されたのである。

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F1のカルチャー化とブランドの関与

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/10/20 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49896

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