データドリブン経営を目指し設置した「R&Aセンター」
MarkeZine:はじめに、R&Aセンターとはどのような組織なのか教えてください。
寺島:R&Aセンターは、その役割を一言で言うと「KDDIのデータドリブン経営を加速させるための専門組織」です。高度なデータ分析とAI活用を通じて、事業課題をデータドリブンで解決することをミッションに、2021年に立ち上げました。また、分析スキルを持つ人材や知見を社内に蓄積し、組織横断でデータ活用を進めていくための推進役も担っています。
MarkeZine:R&Aセンターを立ち上げる前は、データ分析において、どのような課題に直面していたのでしょうか?
寺島:当時は、大きく4つの課題がありました。1つは、課題が発生した時の対応が後手に回っていたことです。契約者数の減少やそれに伴う売上の低迷といった問題が起きても、はっきりと数値に現れるまで状況把握ができておらず、対応が後手に回っていたのです。問題が起きてからではなく、“先読みで”手を打てる仕組みの必要性を感じていました。
2つ目は、ナレッジのサイロ化です。部ごとにデータ分析を担う人材はいたものの、それぞれが独自にノウハウを持っている状態で、会社としてのナレッジが蓄積されていませんでした。
3つ目は人材育成の問題です。先述のとおり各部でデータ分析を行っていたのですが、横断して見ると、実践的なスキルを持つ人材は限られていました。とはいえ、人材を育成するほどの余裕も知見もなく、各部の担当者の知識・経験に分析の質が大きく左右される状況だったのです。
関連して、リーダー層・マネージャー層がデータ分析の知見を持っていなかったため、データ分析業務の価値を十分に理解できておらず、各部のデータ分析を担当する社員の評価が適正になされないという問題もありました。
4つ目はデータの管理状況の問題です。マーケティングに有用なデータを部署ごとに収集していたものの、集計方法や使い方もバラバラで、せっかく集めた情報を経営判断に活用しきれない状況が続いていました。
MarkeZine:その当時は、データ分析の業務にどのように対応されていたのでしょうか?
寺島:部ごとに外部パートナーに入ってもらい、データ分析の業務をサポートしてもらっていました。ただ、データドリブン経営を目指すならば、KDDI内でデータ分析のスキルを持った人材を育成し、社内で分析から意思決定までのサイクルを回せるような状態にしなければなりません。
データドリブン・マーケティングの内製化に向けて、適性のあるメンバーを集めてR&Aセンターを立ち上げた形です。
