「行動データ」の活用で、顧客ニーズを検知するシステムを構築
MZ:電通デジタルとのプロジェクトについて、全体像をお話しください。
西:私たちは、データマーケティングによって顧客行動を深く理解し、一人ひとりのお客さまに最適な情報や商品を届ける必要があると考え、2020年よりGoogle Cloudをベースにしたマーケティングプラットフォームを構築しました。
この取り組みの中核となるのが、電通デジタル様と共同で開発・高度化を進めている「顧客ニーズ検知システム」です。属性データや銀行取引データに加え、アプリやWebサイトなどで得られるお客さまの行動データを統合・分析。ニーズを定量的に推定し、最適なタイミングで営業アプローチを自動的に行う仕組みとして確立しました。
西:これにより、個人ローン施策においては従来の属性ターゲティングと比較して申込率が2倍以上になりました。営業効率化と顧客体験の両面で大きな成果を上げていると感じます。
ネット銀行を経て、2020年に横浜銀行へ入行。MAツールを活用したデジタルマーケティング業務のチームリーダーとして、顧客の行動データに基づいたマーケティングに取り組む。
佐藤:当初は、Web上の行動データのみを取得・活用していました。しかしCookie規制により、Web上のデータだけでは厳しくなってきたタイミングで、アプリデータにも活用範囲を拡張しました。以降も、世の中の状況やシステムの状況を鑑みて、データや機能を順次拡大することを心がけています。
今ではアプリもWebも、オーガニックのログだけではなく広告ログまで取得できる仕組みを作り、ニーズをより精緻に捉えられるようになってきました。
佐藤晃氏
横浜銀行のプロジェクト立ち上げから参画し、現在はMA、CDP、アプリ接客基盤、スキルトランスファーまで、IT部門全体を支援する。
データ活用の内製化を実現!継続的なスキルトランスファーの取り組み
MZ:特に注力されてきたお取り組みについて教えてください。
西:基盤の構築に加え、私たちが特に注力しているのがデータ利活用の内製化です。システムを作り始めた当初から自社運用を見据え、内製化を前提として進めてきました。
電通デジタル様からはMAツールの導入・運用支援をはじめ、BigQuery(Google Cloudが提供するクラウド型のデータウェアハウスサービス)を活用したデータ分析の実践サポート、さらに機械学習や生成AIのプロンプト設計・活用ノウハウの移転など、現場の自走力を高める伴走型のスキルトランスファー支援をいただいています。
これにより、現場の担当者が自らデータを読み解き、顧客ニーズに応じた施策をスピーディに展開できる体制が整いつつあります。組織全体のデジタルリテラシー向上とマーケティングの質的転換を実現する、重要なステップになっていると実感します。
佐藤:横浜銀行様のデジタル戦略部 マーケティング戦略室では、現在は大半の方が当社のスキルトランスファーを受けたことがあるのではないかと思います。西さんはその一期生でした。
Excelやテキストエディタの使い方といった初歩から始め、SQLやMAツールの活用まで、週2回ほどの頻度で実施させていただいています。他にもデータ集計業務の支援、機械学習やAIの支援も含めて、全般的かつ継続的にサポートを行っています。

