事業者とワーカー双方の価値を高める
――顧客がツーサイドですが、タイミーはどのようなCRM戦略をとってきましたか。
中川:ワーカーと事業者双方から、入口の段階ではタイミー=単発バイトを募集するプラットフォームだと認識されていて、継続して使うという価値がなかなか理解してもらえません。そこを適切に伝えていくために、事業者が来てほしい条件の人に出会えるようサポートしています。すると先述したようにリピーターが生まれ、採用すればするほど強力な戦力となったり、長期採用が可能になったりします。
さらにワーカーには、タイミーに蓄積した仕事歴や評価などのログをもとに、当社の正社員雇用サービス、タイミーキャリアプラスで正社員になる支援も行っています。ただ、こうした一連の価値を最初に伝えてもあまり響かないので、利用をしてもらいながら適切なタイミングでコミュニケーションしていきます。
――タイミングを見極めるのが難しそうですが、どのようなことをトリガーとしているのですか。
中川:事業者にはカスタマーサクセスの担当者がついています。彼らが「このエリアでアルバイトを10人入れるには、リピーターが何人ほど必要です」といったコンサルティングをしています。
ワーカーの場合はいろいろなトリガーがあるのですが、たとえばプロフィール情報が充実していない場合は登録すると求人が届きやすくなりますとか、利用回数が増えるほど理想的な就業体験に近づきますというコミュニケーションをしています。
誰が・どこでその広告を見るか?を考える
――集客の際のメッセージの伝え方もワーカー向けと事業者向けで異なりますよね。
中川:メッセージを出す際には、どちらかに偏りすぎないようバランスに注意しています。たとえば「お試しで働けます」と伝えるとワーカーにはハードルが下がりますが、事業者には「お試し感覚で来られても困る」と思われてしまいます。個々の求人では、あえて「お試しで」という言葉を使う提案をする場合はありますが、あくまで例外です。
――コミュニケーションについて、学びになったケースがあれば教えてください。
中川:まだ商圏を絞っていた、2021年頃に埼玉県で行った施策ですね。あるエンタープライズ企業とのマッチングのため、最初はワーカー向けにデジタル広告を出稿していたのですが、人事担当者の方に「タイミーさんはワーカーを集めるために何かしているのですか?」と言われてしまったのです。
事業者の方はデジタル広告を目にする機会がなく、我々の施策に気づいてもらえていなかったのです。そこで、市内を走るバスへのラッピング広告や、駅での交通広告を出稿しました。
――すごいですね。ROIだけを考えるとその判断は難しそうです。
中川:そうですね。常にこのような判断はできませんが、信頼を失うのを防ぐためには、数字以外の判断が必要だと感じました。
――直接的な利ではないかもしれませんが、担当者が見る場所に出すと相手の印象も大きく変わるわけですね。
中川:はい。担当者の方に「頑張ってくれていますね」と言ってもらえ、ちょうどデジタル広告も効き始めてきて、マッチングするようになりました。これは学びの多い事例でした。セールスが担当者の心を動かそうと真摯に頑張っていたので、マーケティング側もサポートしてサクセスできました。
