SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

人起点の顧客関係構築を考える

ワーカーと事業者の長期的な関係をつなぐ、タイミー中川氏が語るツーサイドプラットフォームのCRM戦略

全社で共有する顧客中心の思想

――タイミーの中で、マーケティングとセールスやカスタマーサクセスなどの連携はどのようにとっているのですか。

中川:創業から8年間で従業員数が現在1,500名ほどと急拡大しているので、部署間の円滑な連携を目指している最中です。ただ、全社的に顧客中心の思想が根付いているので、各部署の判断に大きなズレが生じにくいと思います。

――顧客理解を深めるために行っていることはありますか。

中川:毎月約50人名のワーカーにお越しいただくミートアップイベントを開催し、インタビューをしています。ここにはマーケターもセールスもプロダクト担当者も参加できます。普段ワーカーと接する機会がないセールスが、「こういうすごい人たちがマッチングしてくれると思うと、クライアントに自信を持ってすすめられます」と、モチベーションにしてくれることもありました。

 他にも年1回、「Timee SUMMIT / Timee CUP」という全社総会イベントを実施しています。そこでワーカーの方に社長と対談してもらい、なぜタイミーを使ってくれているのかなど話を聞いています。

――そういったイベントには、どのようなワーカーの方が参加されているのですか?

中川:いろいろな方にご出演いただいています。たとえば仕事をリタイアされたシニアの方から、「社会とのつながりを作りたくてタイミーを利用している」というお話や、英語ができる方には「外国人のお客様に英語で対応したら店長にすごいですねと言われて自己肯定感が上がった」というようなお話をしていただいたことがありました。

幅広い就業形態や国内外の課題解決を

――ワーカーと事業者のバランスをどうとるかについても、部署間で連携をとっていますか。

中川:それは経営会議でも議論しています。経営陣に意見を伝え、最終的にはトップで判断してもらっています。ツーサイドのバランスをどうとっていくべきか言語化することには時間を使っていて、そういう議論をする機会が多いのも当社の特徴です。

――中川さんとしては、軸足はどちらに置いているのですか?

中川:どちらかというと、会社として軸足はワーカーにあると思います。タイミーはアルバイトを始めるときのハードルを下げたことで、働き方を塗り替えつつあります。タイミーでは、違うと思ったら次は別のところで働けばいいので、試行回数が増えます。その結果自分に合った場所を見つけられる確率が高くなり、働くことにポジティブなワーカーが多くなりました。それはタイミーが世の中に提供できている価値の一つだと思います。

――そうした価値提供によって、成長されたのでしょうね。今後タイミーでこんな世界にしていきたいという展望はありますか。

中川:夏休みなど一定期間のアルバイトにもタイミーの働き方を持ち込めたらと考えています。さらにその先に長期アルバイトへのシフトの支援、社員への支援もありますし、蓄積されたマッチングのデータを活かして単発バイトだけではない就業形態にも貢献できるでしょう。また、我々は給与振込の立て替えを行っているので、フィンテックの領域に踏み込むのもアリだと思います。

 2025年7月には、韓国の会社に出資しました。韓国でも2028年頃から人手不足に転じると言われています。日本だけでなく、海外の人手不足の課題解決にも貢献していけたらと考えています。

編集後記(飯髙悠太)

 全国1,000万人以上のワーカーが登録し、スキマバイトという言葉を世の中に浸透させたタイミー。今回はタイミーの中川祥一さんに話を伺った。

 タイミーが従来のアルバイト求人プラットフォームと大きく異なるのは、働くまでのハードルを大きく下げた点。これまでは説明会や面接、シフトの提出など時間がかかってしまっただけでなく、働いてみたらミスマッチが生じるなど課題が多かった。そのすべてをカットすべくタイミーは誕生した。

 具体的には、企業とワーカーの継続的な関係構築の仲介役として入口の面倒を解消し、良い関係を最大化できるよう事業者からワーカーへ特別なオファーを可能とした。さらに、これまで可視化が難しかったワーカーのスキルをバッジで表示することで、スキルに応じた時給の提供という画期的な変化も起きている。

 “働く”の新常識を創ってきた訳なので、想像できない壁が存在していたに違いない。特に、顧客がツーサイドなので、事業者とワーカー双方の価値を高めるためのCRM戦略が重要だろう。また、記事でも触れているが広告の効率だけでなく事業者の地域特性などを考慮した施策の背景にも、ツーサイドゆえの難しさを感じる。一方、そこを解決したいと本気で考えるタイミーの想いも伝わる。

 この観点は、多くの企業で参考になるのではないだろうか。提供しているサービスは企業ごとに様々だが、時代がデジタルだから出稿するのではなく、自社のお客様はデジタル以外にどこにいるのかを考える必要がある。

 さらに、ワーカーを集めるミートアップイベントや開かれたユーザーインタビューからは、顧客中心という思想が伝わる。これは言うのは簡単だが、やり続けることは難しい。今回の取材を通して、タイミーは本気で向き合っていると感じた。

 今後は、蓄積されたマッチングのデータを活かした長期アルバイトへのシフト支援や社員化など、新しい働き方を創っていくだけでなく、海外の人手不足の解決を目指すというタイミーに引き続き注目していきたい。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
人起点の顧客関係構築を考える連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/12/02 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50069

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング