売上と相関が高いKPIから逆算する。「PGC×UGC」戦略の立て方
MarkeZine:花王のヘアケア事業では、どのように「PGC×UGCの最適化」を戦略立てて、実行しているのでしょうか。
野原:KPIから逆算して戦略を立てています。私たちの場合、売上と最も相関が高い指標が「SNSのオーガニック投稿数」です。オーガニック投稿数を増やすためには、まずは認知されていなければなりませんし、言及したいと思われるブランドであることも必要です。さらに、実際に商品を使ってもらわなければクチコミは生まれません。
このように「オーガニック投稿」を増やすために必要な要素を分解した上で、どのような仕掛けを作り、どこに予算を使っていくかを考えていきます。

MarkeZine:なるほど。戦略の中で、PGCとUGCはそれぞれどのような役割を担うのでしょう?
野原:PGCは、ブランドの世界観やメッセージを形成する「土台」となります。どんな価値を届け、どんな感情を生みたいのかをしっかり設計し、PGCでブランドイメージを醸成します。
一方、UGCには商品の特徴理解や興味関心を高める役割があります。ベネフィットに近い情報ほど、UGCによる第三者発信のほうが信頼されやすい傾向があります。
川上:PGCとUGCをバランスよく組み合わせ、適切に設計していくことが重要です。また、クチコミ(UGC)で挙がった表現をPGCとUGCの両方のクリエイティブに活かすなど、施策を横断したPDCAを回すとさらなる相乗効果が生まれます。
UGCをどうハンドリングする? 戦略的なプランニングも必須
MarkeZine:良質なUGCを生み出すためには、インフルエンサーとのコミュニケーションも重要になると思います。PGCと違い、UGCは企業側で明確に文言を定めることができませんが、どのようにハンドリングしているのでしょうか?
川上:ウィングリットでは、案件に関わる何百人ものインフルエンサー全員のコンテンツに目を通し、個性に合わせた切り口や表現を提案しています。インフルエンサー一人ひとりの理解に努め、「その人の個性」と「投稿で表現してほしいこと」をアジャストさせていくことが大切です。
そのために、インフルエンサーの個性、支持層の属性、過去の投稿などを分析し、「その人ならではの文脈」に沿って、きめ細かく表現やアウトプットを変えていく必要があるでしょう。

MarkeZine:発信の切り口が異なると、訴求にバラつきが出てしまいませんか?
野原:ブランドに一貫性があると、どんな切り口で発信いただいても、最終的にブランドコンセプトに着地します。たとえば、「melt」は「休息美容」をコンセプトにしています。ここがブランドの核にあるので、「香りがいい」という切り口で発信するインフルエンサーも、セットで「休息美容」の話もしてくれたりします。
MarkeZine:なるほど。そのためにもPGCで一貫性のある世界観を作っておくことが大切なのですね。協働する中で、UGC領域におけるウィングリット社の強みをどう見ていますか?
野原:UGC施策も、インフルエンサーのジャンルや様々な数値を俯瞰的に捉えた、戦略的なプランニングが重要です。ウィングリットさんは、インフルエンサーごとの得意領域や個別の文脈を細やかに分析されているだけでなく、論理的な裏付けをもとに全体のプランニングをしてくださるので、非常に信頼しています。
MarkeZine:ここまで「PGC×UGCの最適化」を進めてきた中で、何か発見はありましたか?
野原:「このくらいのPGCとUGCがあれば、自然とオーガニック投稿が生まれてくる」というラインが見えつつあります。PGCとUGCの相関を完全に解明できているわけではないものの、経験とデータの蓄積で再現性が高まってきていますね。

