観戦の渡航・滞在・チケット価格の上昇を生む「マーケットプレイス化」
さて、W杯期間中(6〜7月)のニューヨーク首都圏は、東京五輪や世界陸上の比ではない混雑と高騰が予想される。「出張ついでに観戦しよう」などは避けたほうが良い。
決勝戦(2025年7月19日)を含む8試合が、ニュージャージー州「メットライフ・スタジアム(収容人数約82,500人)」で開催される。NY市内のホテル価格は、通常でも高額のさらに3倍程に跳ね上がる可能性が高く、特にマンハッタンのビジネスホテルクラスならば決勝戦前後には、最低宿泊日数(3泊以上など)を含めて、宿泊費だけで100万円規模に跳ね上がる可能性もある。
ホテルの代替として、多くの旅行者が期待する「Airbnb」(民泊)も、ニューヨーク・ニュージャージー区域では2023年から「30日未満の短期賃貸」に対し極めて厳しい規制を施行しており、日割りの予約は事実上困難となっている。さらに、試合前後のライドシェア(Uber・Lyft)はダイナミック・プライシングにより通常の2〜4倍に跳ね上がることがほぼ確実だ。
ニュージャージーとマンハッタン側への「鉄道移動」も、2014年のスーパーボウル開催時のような大混乱が予想され、輸送能力不足と近年のセキュリティチェックの厳格化により、真夏の渋滞と混乱は過去以上の可能性が高い。
さらに試合観戦チケットは、FIFAそのものが主体になって「二次販売」を奨励する「Resale/Exchange マーケットプレイス」を展開する。チケットを先買いした人が価格を上げて転売すれば、FIFAは「売り手から15%、買い手から15%」の合計30%を手数料収入とする。しかも再転売の価格上限はなしで、値上げ転売されるたびに儲かる仕組みだ。商品ID(チケット)+販売者ID(FIFAから登録した購入者ID)+販売サイトID(FIFA)の「三方よしのID」の厳格構造であり、違法サイトのフィッシングと区分したい。
W杯の経済マーケティングは、2026年大会のこうした「裏側」に流れる動きを押さえておくことが、2030年、2034年の大会までを見据えた企業・国家の「本気の長期戦略」を読むヒントになる。
