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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

“勘と単発ROAS”から卒業するデータドリブンな広告運用【Amazon unBoxed 2025】

 広告運用におけるROASへの“意識”は根強い。しかし、短期的な売上効率だけを追い続けても、市場環境が変化したとき、再現性のある成長基盤を築くことは難しい。今必要とされているのは、「新規顧客の質」「LTV(顧客生涯価値)」「上流施策の寄与」を包含した評価軸であり、それを実務として回せる仕組みである。Amazon unBoxed 2025では、この問いに対する“現実的な次の一歩”として、Amazon Marketing Cloud(AMC)とAmazon DSPが提示するシグナル活用の未来像が示された——。広告運用の実務と同領域の先端テクノロジーに精通するShirofuneの菊池満長氏が、同イベントの内容を整理し、前後編に分けてレポート。後編となる本稿では、主要セッションから日本の広告主や代理店の読者が明日から活かせる示唆を掘り下げる。

LTVと新規顧客の質を“自然言語”で分析する時代

画像を説明するテキストなくても可
Amazon Ads シニアプロダクトマーケティングマネージャーのJamie McGill氏

 セッション「Accelerate time to decisions: Amazon Marketing Cloud's next-generation AI-powered analytics suite(AMC次世代AIアナリティクス)——広告判断は「勘」ではなく『即時に検証できる問い』へ」では、AMCのプロダクト責任者であるJamie McGill氏とDoug Pereira氏が登壇。AMCの本質を「組織全体の意思決定速度を上げるためのGPS」と位置づけた。

 従来、広告主がLTVや新規顧客の質を把握しようとすると、専門スキルを持つアナリストが複雑なSQLを書き、インサイトが得られるまでに数週間かかることも珍しくなかった。この“分析までの距離”こそが、マーケティングのスピードを阻害していた。

 AMCが提示した打開策は、AIアシスタント「Ads Agent」による“自然言語アナリティクス”である。

 Doug氏は、サプリメント企業のマーケティングマネージャー「Manu」を例に、どのように意思決定が変わるかを描いた。Manuは従来数日かけて確認していた「新規顧客を最も多く連れてきている商品」を、AMCの推奨テンプレートから数クリックで分析し、すぐさま投資配分を見直すことができた

 さらに、Manuが直面した「高LTV顧客に似た新規を増やすにはどうするか」という課題に対し、Ads Agentは“上位30%のLTVを持つ顧客の類似オーディエンス”をSQLなしで生成。配信結果としてリピート率が大幅に改善したという。高度な分析ができるアナリストがいないチームでも、LTVという本来最重要のKPIに基づいた運用へ移行できるという意味で、これは大きな進歩である。

 また、AMCのデータ体系そのものも進化している。Prime Videoの視聴シグナル、広告接触の25ヵ月履歴、購買データの5年分といった“長期的な文脈”を踏まえた分析が可能になった。これにより、単一タッチポイントの評価ではなく、上流接触が下流へどう波及するかを一貫して捉えることができる。たとえば、ある保険ブランドは「見積もりページに訪れたユーザーが、どのPrime Videoジャンルをいつ視聴しているか」をAds Agentに自然言語で尋ね、配信のジャンル選定とデイパーティングを刷新した。

 AMCの本質は、「人間の判断を置き換えるAI」ではなく、「人間が問いを立てれば、即座に答えが返る環境」である。読者の皆様の現場でも、LTVや新規の質に関する仮説検証のハードルがこれほど下がったことは、データドリブン運用への大きな転換点となるはずだ。

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顧客価値を最大化する“シグナルの連動”

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菊池 満長(キクチ ミツナガ)

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/12/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/50268

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