なぜ疑わしいと感じるのか~不信ではなく、判断できないという感覚
ニッセイ基礎研究所の調査を見ると、環境配慮に前向きな意識はこの数年、着実に高まっている。価格が多少高くても、サステナビリティに配慮した商品を選びたいと考える人は増加傾向にある。
また、総合調査機関の日本リサーチセンターの調査によると、サステナビリティに積極的に取り組む企業団体は信頼できるとの回答は6割を超え、特にZ世代の中でも次世代(α世代)に近い15~19歳でトップボックスの「とてもあてはまる(信頼できる)」が2割を超える(数表2)。
しかし、環境配慮への関心が高まる一方で、消費者の中には「本当に信じてよいのか」と感じる人も少なくない。この疑わしさは、必ずしも企業への強い不信や拒否感を意味しているわけではない。むしろ、判断できないものを選びたくないという感覚が、その背景にあると考えられる。
たとえば、消費者庁のデータによれば、環境配慮商品を「あまり購入していない」、あるいは「ほとんど購入していない」人の中には、「本当に環境に配慮しているか疑わしいから」という理由を挙げる層が3割に上る。環境への関心がないのではなく、判断に迷いが生じている点が特徴的である(数表3)。
国際機関のICPENでは、商品やサービスの環境特性を誇張または歪曲し、消費者を誤解させる欺まん的な環境広告を「グリーンウォッシュ」として説明している。
ある研究によれば、グリーンウォッシュが生じる背景の一端には「情報の非対称性(情報の格差があること)」と呼ばれる要因があるとされている。消費者は、企業がどのような意図や根拠で環境訴求を行っているのか、その内側までを直接確認することはできない。商品や広告を通じて見えるのは結果やメッセージであり、その裏にある動機や実態は見えにくい。
そのため消費者は、「社会や環境のために本気で取り組んでいるのか」「イメージ向上や批判回避のためなのか」といった点を推測しながら、判断を下すことになる。このように考えると、消費者が環境に良い選択をしたいという意識を持っているからこそ、逆説的に「判断を誤ることへの不安」が生じているとも考えられるだろう。
国際調査が映す、環境表示の落とし穴~「短く伝える」ほど起きる誤認リスク
ここまで見てきたように、日本では商品のパッケージが、環境配慮を知る最大の入口になっている。消費者にとって企業の姿勢や信頼感を左右する要因となっており、より良い評価に繋がる反面、グリーンウォッシュと見なされるリスクにも繋がる。
この傾向は、決して日本に限ったものではない。国際的なデータを見ても、環境訴求に関するリスクは大きな論点になっている。
国際消費者保護執行ネットワークが2020年に実施した国際的なウェブサイト一斉調査で、衣料品、化粧品、食品などを扱う約500のサイトを詳細に分析した結果、約4割のサイトで、消費者を誤解させる可能性のある環境主張が確認された。ここで問題とされたのは、明確な虚偽だけではない。条件付きの情報が十分に説明されていなかったり、商品の一部の取り組みが、あたかも全体の特徴であるかのように伝えられていたりするケースである。
この結果が示しているのは、環境訴求が増える中で、商品のパッケージや販促物の表示、商品説明といった「短く、わかりやすく伝えるための工夫」が、同時に誤認を生みやすい構造を持っているという点である。限られたスペースで環境配慮を伝えようとすると、どうしても抽象的な言葉や象徴的な表現に頼りがちになる。その結果、企業側の意図以上に、消費者の受け取り方が広がってしまう可能性がある。
重要なのは、こうしたグリーンウォッシュに関する問題が、一部の悪質な企業に限られていない点である。国際的な調査が示すように、環境主張を行う企業が増えれば増えるほど、誤認のリスクも同時に増幅する。環境訴求は、企業の努力の証であると同時に、リスクを伴うものになっていると言えるだろう。
