LTV最大化を目的にしていて良いのか?
──Sansanにおけるコミュニティ活動の歩みを教えてください。
一方井:当社がコミュニティの活動を始めた時期は2016年に遡ります。当時はCS(カスタマーサクセス)組織の一部としてコミュニティを運営しており、主な目的はLTVの最大化でした。つまり、プロダクトをより深く活用してもらい、解約を防ぎ、売上を最大化するための場としてコミュニティが存在していたのです。
──2021年に大きな転換があったとうかがいました。
一方井:私自身が2021年にコミュニティを担当することになり「今のあり方で本当にコミュニティの価値を最大化できているのか」という疑問を抱きました。当社のミッションは「出会いからイノベーションを生み出す」です。プロダクトの話に閉じたコミュニティは、この壮大なミッションに対して世界観が狭いと感じたのです。
出会いのあり方はもっと多様であり、その多様さがイノベーションの創出を促すはずです。会社が掲げるミッションをコミュニティという場所でこそ体現すべきではないか──そう考え、LTV最大化という目的をアップデートし、より広義の「イノベーション創出」を目指す場としてコミュニティを再定義しました。それが「Sansan User Forum」です。
──組織の体制も変わったのでしょうか?
一方井:運営主体がCS組織から独立した「コミュニティ戦略室」という専門組織になりました。LTV最大化だけが目的ではなくなったためです。会社のミッションにかけて、組織のミッションを「コミュニティからイノベーションを生み出す」としました。
方針を変えた当初、社内の反応は厳しいものでした。LTVというわかりやすい指標から離れたことで、経営層に対してコミュニティの価値を証明し直す必要があったからです。実績がまだない中で「信じてほしい」と言い続け、一つひとつの施策で成果を積み上げることで、ようやく現在の立ち位置を確立することができました。
“信頼残高”が発足時の助けになった
黒田:専門組織を立ち上げてコミュニティを運営する際のポイントは「ミッションの明確化」です。Sansanさんの場合、全社ミッションをコミュニティのミッションへ見事に落とし込んでいます。これにより、コミュニティの成長が企業の成長とアラインし、チームが自発的に動きやすくなるとともに、他部署からの理解も得やすくなるのです。
──他部署との連携において、苦労した点はありますか?
一方井:苦労はありましたが、私自身のキャリアパスが大きな助けになったと思います。十年以上会社に在籍し、様々な部署で多くの仲間と一緒に仕事をしてきた「信頼残高」があったからこそ、実績がない初期段階でも「じゃあ協力するよ」と言ってもらえました。信頼の厚いメンバーが集まっていることはチームの強みになっています。
また「win-win-win」の関係を常に意識しています。我々よがりの企画になってもダメですし、ユーザーさんの利益だけを考えていては社内の協力が得られません。また、社内の利益だけを優先すればユーザーさんは離れていきます。「三方よし」の状態まで企画を練り上げることが我々の仕事です。
──2021年のリニューアルにともない、コミュニティプラットフォームを「Commune」にリプレイスした理由を教えてください。
一方井:従来のコミュニティより扱うテーマが広がるため、興味関心ごとに細かくグループを作れる柔軟な機能が必要でした。コミューンさんは「コミュニティの中にコミュニティを作る」という構想を掲げており、我々が求める機能を十分に備えていたためCommuneを選びました。

