「認知」だけでは選ばれない時代の危機感
NECは、ITサービスから社会インフラ、AI、セキュリティまで多岐にわたる事業を展開する巨大企業だ。しかし、同社はBtoBビジネスを取り巻く環境の激変に強い危機感を抱いていた。
「顧客が営業と接点を持った時点で、すでに購買プロセスの約7割は終了している」と言われる現代。企業が直接顧客を説得できる時代は終わり、顧客は自ら情報を収集・選別するようになった。この状況下では、単に技術やソリューションが「知られている(認知)」だけではもはや不十分だ。顧客が課題に直面したその瞬間に、真っ先にパートナーとして名前が挙がる「想起される存在」にならなければ、ビジネスの土俵にすら上がれないと考えたのである。
一方で、NECには1952年から続く「ユーザー会」が存在していた。全国規模で約3,000社が参加する巨大な組織であり、地域ごとに根ざした活動を通じて、長年にわたり参加企業間の深い交流や情報交換に貢献してきた。しかし、デジタル化の進展とビジネス環境の急速な変化に伴い、同社は従来の交流基盤が持つ価値に加え、顧客(参加企業)と自社の双方にとって、より具体的なビジネス課題の解決や事業成長に直結する価値の提供が不可欠であると強く感じるようになっていた。
「この変化の時代に、コミュニティとしてより大きな価値を提供するにはどうすべきか」。NECは、顧客企業との共創による新たな価値創造を目指し、大きな決断を下す。60年の歴史を持つユーザー会を発展的に解散し、2023年、顧客とNECの双方のビジネス成長を加速させる戦略的コミュニティ「BluStellar Communities」を始動させた。
「縦」と「横」のハイブリッド運営でビジネスを加速
「BluStellar Communities」の設計における最大の特徴は、「事業部主導のテーマ(縦軸)」と「マーケティング部門によるCoE(横軸)」を組み合わせたハイブリッドな運営体制にある。
従来のコミュニティはマーケティング部門が単独で運営しがちだが、それでは現場の深いビジネス課題に踏み込めない。そこでNECは、AIやセキュリティ、ロジスティクスといった注力領域ごとに、その事業を牽引する事業部を「オーナー」として据えた。テーマごとのオーナー事業部とともに、企画・運営を行い、参加企業と深い議論を交わしている。
一方で、マーケティング部門は「Community CoE(センター・オブ・エクセレンス)」として横串を通す役割を担う。コミュニティマーケティング全体の戦略策定、プラットフォームの整備、そして最も重要な「顧客データの統合・活用」を一手に引き受けるのだ。
この体制により、各コミュニティは専門性を保ちながらも、全社視点でのビジネス貢献という目的から逸脱することなく、活動の成果最大化に向けて取り組んでいる。
