SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

COLUMN

その協賛、本当に効いていますか?──長期施策の効果測定を阻む「5つの阻害要因」と正しい測定法

【手法3】コストと精度のバランス型「補正差分法(PSM)」

 先に述べた長期シングルソースパネル調査は非常に強力な調査手法だが、パネル維持にはコストがかかる。まずはスモールスタートで始めたい場合や、運用頻度を上げたい場合に現実的な手法が「補正差分法」だ(図表5)。

画像を説明するテキストなくても可
【図表5】補正差分法による効果測定

 先述した通り、定点調査でやりがちな広告認知者と非認知者の差分には、広告効果だけでなく「元々の興味・利用度の違い(関与バイアス)」の影響が混ざってしまう。そこで、年齢・性別・メディア利用状況などの共変量(属性や嗜好など、広告接触の有無とは別に、結果に影響を与えてしまう背景情報のこと)を用いて、傾向スコアマッチング(PSM)を行うことで認知者に似た非認知者を抽出、同質な者同士で比較する手法が有効である。

 共変量の選定にはノウハウが必要ではあるが、これにより、「関与バイアス(阻害要因5)」を含む「広告認知以外の差」を可能な限り補正し、効果推計の納得度を上げていく。加えて低コストで実施ができるため高頻度な調査が可能となり、「時間経過による効果の減衰(阻害要因2)」に対しては最も強力なアプローチとなる。精度は長期シングルソースパネルに劣る一方、コストや頻度を優先したい局面にお勧めしたい。

長期施策を「説明可能な投資」に変える

 長期施策の効果測定は、手法選びで結論が変わり得る。ポイントは、施策タイプと制約条件から逆算することだ。

施策のタイプ・制約条件 推奨される測定手法 測定の鍵となるロジック
タイムCM・デジタル広告の固定枠 (接触者をログベースで判定しやすいもの) ログベース定点調査 記憶(認知)ではなく、接触ログに基づく群分けを行うことで、「好きだから覚えている」という関与バイアスを排除する。
スポーツ協賛・命名権・オウンドメディア (ログ判定が難しく、中長期の資産化を狙うもの) 長期シングルソースパネル調査 同一回答者を追い続け、DID(差の差法)を用いることで、季節要因や競合施策といった「外部ノイズ」を純粋な効果から分離する。
スモールスタート・高頻度運用 (低コストかつスピーディに検証したい場合) 補正差分法(PSM) 統計的な傾向スコアマッチングにより、認知者に似た非認知者を擬似的に作成。「元々の関心の差」を補正し、比較の公平性を担保する。

 数億円~数十億円規模の意思決定を、「測りにくいから」という理由で曖昧にしてしまうのはナンセンスだ。5つの阻害要因を前提に、調査設計・分析手法を工夫してノイズを制御する。長期施策を“説明可能な投資”に変えることが、これからのマーケティングに求められる役割だろう。

 本稿は、野村総合研究所(NRI)が定期開催している「消費者マーケティングデータ研究会」の第39回にて紹介した内容をダイジェストとしてまとめたものです。「消費者マーケティングデータ研究会」の次回開催情報はこちらから。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
COLUMN連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

原野 朱加(ハラノ アヤカ)

株式会社野村総合研究所 マーケティング戦略コンサルティング部 エキスパートコンサルタント

マーケティング調査会社を経て2016年中途入社。データを活用したマーケティング支援を専門領域とし、民間~公共まで幅広いクライアントを支援。NRI認定データサイエンティスト。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

梶原 光徳(カジハラ ミツノリ)

野村総合研究所 マーケティング戦略コンサルティング部 グループマネージャー
2008年入社。以来、マーケティング×データアナリティクス分野を中心に、民間企業の
コンサルティングに従事。社内の新規事業の企画や立ち上げなども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/03/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50493

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング