"準公式コンテンツ"という立ち位置で情報発信
自社サイトにブログツールを導入して独自URLで構築することにはこだわらず、一般のブログサービス(ココログ)を利用することにした一方で、コンテンツについてはしっかりと検討している。ブログを日記として捉えれば、売り場担当者が「今日のおすすめ」を自分の生の文章で日々アップするような形も考えられる。しかし、北島氏はそれは選択しなかった。
ブログ「駅弁大会への道」は個人が語る形ではなく、“準公式”の立ち位置で、情報を定期的に発信していく場という位置づけに決めたのだ。アップする内容をきちんと企画会議で検討し、必要があれば取材して、ウェブ担当者がライティングして更新する。忙しい中で業者にインタビューに応じてもらったりといった手間はかかるが、そのおかげで現在のコンテンツの充実がある。
また、ブログ初年度から会場の様子を伝えるために動画配信も行っている。これも既存のウェブサービスを利用して、ウェブページへの埋め込み型で実現している。実は北島氏はブログ版「駅弁大会への道」で、「ブログでやれることはやりつくそう」と考えていたという。その結果、このブログが社内での成功事例となり、次に企業ブログによるプロモーションを行いやすくなる。
京王百貨店では、2008年8月から百貨店自体のブログもはじめている。駅弁大会の経験を活かして、週2回くらいのペースで更新している。
基本コンテンツとネタコンテンツの棲み分け
運営上で気をつけていることは、百貨店のサイトなので来場者の幅が広いことは意識し、内容が偏らないようにしていることだという。例えば、毎年同じ内容の繰り返しになったとしてもも、初心者ガイドは必ず置いておく。
一方で、駅弁大会に毎年足を運んでような常連に向けたネタもたまに混ぜていくというバランスも忘れない。2007年には、団子屋の名物おばあちゃんの動画を掲載してネットで話題になった。ダリ夫氏はmixiのコミュに「京王blogGJ!」と書き込み、それを見た北島氏は「『よっしゃ!』と思いました(笑)」と当時を振り返って笑った。
大会の名物おばあちゃん「二四三屋(ふじみや)」の田村艶枝(つやえ)さん(駅弁大会への道'07ブログ動画より)

そういった部分を、ダリ夫氏は「ブログから会場の楽しさが伝わる」と高く評価する。これは、ブログの特質を正しく認識し、自社内から発信できるコンテンツをきちんと把握しているからこそ可能なのだろう。ウェブログや動画配信のシステムは一般のサービスを利用することでコストを軽減しつつ、過去ログの維持やPDFによるデータのダウンロード配布といったところも、ネット流のやり方に倣ってユーザーの利便性を高めている。京王百貨店の企業ブログ運営は、実に地に足がついていると感じた。