形は知性に働きかけ、色は感情に働きかける
色の効果で面白い話がある。アメリカの色彩学者ルイス・チェスキンは、その著書の中で「妻を変えるより色を変えよう」といった趣旨の話を述べている。
抑うつ症の妻とそれに悩む夫が、専門家の勧めで壁の色や室内の小物や絵画などの色を変え、改装を行った。すると一か月ほどでうつ状態だった妻は、明るく朗らかになったという話である。チェスキンは、世の夫達に「神経質だとか抑うつ症であるとかで、奥さんを変えたいという人は、妻を変えずに色を変えなさい」と忠告している。
『役立つ色彩』 ルイス・チェスキン著 大智浩訳 白楊社 1978年
商品をアピールするのに、どのようにアピールするのかは大きく分けて2つあるのではないだろうか。知性に働きかけてアピールするのか、イメージ・感情に働きかけてアピールするのかだ。例えばパソコンなら、前者はその性能(CPUやHDなど)や導入後の効果を重視するであろうし、後者でなら「かっこいい」、「かわいい」、「自分らしい」という直感に働きかけようとするだろう。色は後者の感情に働きかけるアピールに大いに役立つと言える。
「形は知性に働きかけ、色は感情に働きかける」とはよく言ったものだが、企業や商品のイメージカラーまたはシンボルカラーといったものは、まさにこの消費者の感情に働きかけようとするコミュニケーション戦略と言えよう。特にこの色を使った「アプローチ」は、女性に強く影響を与える。男性女性どちらが優秀かという話ではなく、男性と女性では脳の構造が違うのだ。脳に脳梁というものがあるのだが、男性は女性に比べ細く、女性は男性に比べて太いそうだ。脳梁が細い男性は、一般的に深く掘り下げて考えることが得意であり、細い女性は直感力に優れている。
Eコマースに当てはめると、もちろん価格は考慮外として、モノの購買基準は、男性はスペックや、導入後の効果を重視するのに対し、女性はそのサイトがかわいい・キレイ・私っぽいなど直感による選択をしやすいということである。もしサイトの回遊を男性と女性で別々にルート分けできるのであれば、男性に対してはその商品のスペックや効果を説明するページや表示に注力し、女性には感情に働きかける表示やページに尽力すると面白い結果が得られることだろう。ちなみに女性的な判断は3秒程度で行われているとも言われており、いかにより直感に訴えるかが重要である。
ちなみに女性向けサイトを運用しているサイトオーナーは一般的なサイトよりも色にかなり気配りをしているようで、その苦労話を成功しているサイトほどよく聞くことができる。別に、私は色こそが全てではないし、万能だとも言うつもりはない。しかし、そのもたらす効果を利用する姿勢こそ、正しい取組みだと信じている。