今回のお題は「最近のメディア環境の変化」です。メディア環境の変化によって広告メディアのパワーバランスも変化していますが、今回はその中でも今後の成長が期待されるデジタルサイネージについて触れてみたいと思います。
今年の注目株:デジタルサイネージ
過去のMarkeZineの記事でも触れていますが、今年はデジタルサイネージ(電子看板)に注目が集まっています。
ニュースでも取り上げさせていただきましたが、シード・プランニングの発表によると2015年には一兆円規模の市場になると予測されています(参考:第6のメディア「デジタルサイネージ」、2015年には1兆円市場に)。この数字を見る限り新たな広告メディアとしての期待値の高さがうかがえるわけですが、それでは広告メディアとして実際にどのように活用されているのでしょうか。
デジタルサイネージの活用事例(国内)
国内のデジタルサイネージの事例としては、山の手線などのドア上部に設置されている液晶ディスプレイ「トレインチャンネル」が成功事例として挙げられます。
この「トレインチャンネル」の広告売上高は毎年約10%増を記録しており、この不況化においても満広状態を維持しているとのことです(参考:デジタルサイネージ、屋外で変幻自在の新世代広告《広告サバイバル》,東洋経済 Online)。また、企業の広告を単純に流すのではなく、ニュース・天気予報・占いをはじめとする情報番組を放映することによって、乗客の注意を惹いているところも成功した理由の一つとなっています。
デジタルサイネージの活用事例(海外)
一方、海外に目を向けると米国の大手小売店チェーンのデジタルサイネージネットワークが有名です。
このネットワークは米PRN(プレミアム・リテール・ネットワーク)が開発したネットワークで、ウォルマート、ベストバイなど、大手小売チェーンの店舗に22万5000台のデジタルサイネージを設置しています。これらのすべての店舗の来訪者を合計すると4週間で2億5千人となり、米国人の約8割にリーチできる計算となるようです(参考:『次世代マーケティングプラットフォーム』 湯川鶴章著)。
また、同著によるとPRNはこのネットワークに5種類のデジタルサイネージを提供しています。この5種類の中には、売り場すべてに共通の広告を見せるデジタルサイネージもあれば、ターゲット層に応じた広告を見せるデジタルサイネージもあり、購買意欲を持った顧客に対して、より効果的な広告を表示させることが可能だと同著では述べています。
より魅力的な広告メディアへ
さて、前述したシード・プランニングの調査では、デジタルサイネージ市場の中で今後は広告・販促分野が成長すると予想しています。
テクノロジーの標準化の問題や、効果測定の課題など、広告メディアとして成長するための障壁はいくつか存在すると指摘されていますが、前述の「トレインチャンネル」やPRNの事例のように、場所、広告表示のリアルタイム性など、従来メディアにはない付加価値をつけることで、唯一無二の広告メディアとして成長していくのではないでしょうか。