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MarkeZine Day 2026 Autumn(AD)

“売るためのEC”はもう限界を迎えている。顧客に選ばれる理由を作る「メディアコマース戦略」のすすめ

和泉 ゆかり[著] / 川口 紘[写] / MarkeZine編集部[編]

 商品力・価格・UI/UXの改善だけでは、もはや自社ECの競争力は生まれない。今、成長しているECに共通するのは、逆説的だが「売ること」を前面に出さない設計である。顧客の課題に応えるコンテンツで信頼を蓄積し、そこで得た顧客データで体験を磨き込む。この循環を持つECだけが、顧客に「選ばれる理由」を意図的に作り出せている。2026年9月開催のMarkeZine Day 2026 Autumnでは、W2(ダブルツー)の鴨下文哉氏が登壇。実際にコンテンツと顧客データの統合管理によって成長を実現した事例とともに解説した。

“売るためのEC”は、もう限界を迎えている

 自社ECプラットフォームの開発・提供を通じて、コンテンツと顧客データを統合したメディアコマースを数多く手がけてきたW2の鴨下氏。セッションの冒頭で“売るためのEC”が限界を迎えていると語り、背景にある3つの構造的な変化を解説する。

W2株式会社 執行役員兼S&M本部 本部長 鴨下 文哉氏
W2株式会社 執行役員兼S&M本部 本部長 鴨下 文哉氏

 1つ目は、消費者の迷子化だ。顧客接点が多様化・分散したことで情報が散在し、消費者は自社ECサイトやWebサイト上で情報を得にくくなっている。これにともなって生じているのが「体験の分断」だ。「見る・知る・学ぶ・買う」という一連の購買体験が、チャネルごとにバラバラの場所で行われるようになっており、情報自体は存在していても、消費者が情報をもとに「選ぶ」ことができない状態に陥っている。加えて、チャネルや購買体験そのものが分断され、企業側もそれらの運用に疲弊しているのが実情である。

 「自社ECを『ここを見ればすべてが揃う』集約点とすることが求められています」(鴨下氏)

 2つ目の構造的な変化は、大手ECモールにおけるAIエージェント活用の進展である。従来の「カタログ型・展示型」ECサイトでは商品数と利便性の面で競争が一段と厳しくなっており、結果、自社ECは価格勝負に出ざるを得ない状況だ。

 そして3つ目は、AI時代における消費者の情報収集行動の変化だ。実際、AI経由のECサイト流入増加率は前年比302%に達している。AIは十分な情報を保持しているサイトを優先的に推薦する傾向にあるとされているため、コンテンツのないECサイトは、もはや「存在しないのと同じ」になりつつある。

自社ECを「売上を生み出すメディア」へ。

 先述の3つの構造変化を踏まえ、鴨下氏は自社ECを単なる販売チャネルではなく、顧客の商品理解や商品選択を支援するメディアとして活用し、その情報接点を購買・売上につなげる、つまりメディアコマースへの転換が必要だと語る。

 メディアコマースとは、コンテンツ・EC・データを一体化し、顧客接点を広げながら購買につなげていくコマース戦略だ。購買履歴・行動データ・コンテンツ接触データを統合し、そのデータをもとにAIが顧客一人ひとりに最適なコンテンツを生成・配信する。こうした循環を回し続けることで、集客から購買、ファン化までを一つのプラットフォーム上で実現していく仕組みを構築していく。

メディアコマース戦略を説明する図です
メディアコマース戦略(タップ/クリックすると拡大します)

 目指すのは、ECをメディア化し、統合されたデータベースと生成AIを組み合わせることで、「購買の瞬間」を最大化していくことだ。

 W2が目指すのは、ECサイトを「商品を売る場所」から「売上を生み出すメディア」へ変えることだ。その上で、購買履歴や閲覧履歴などのデータを一つに統合し、生成AIで解析する。そうすることで、顧客が「買いたい」と思う瞬間を逃さず、その機会そのものを増やしていく。そのためのポイントは2つある。

 1つ目は、商品情報だけでなく、使い方や選び方、ブランドの背景といった「読みたくなる情報」を発信し、顧客がサイトを訪れる理由をつくることだ。購入以外の接点が増えれば顧客との関係が深まり、繰り返し購入してくれるロイヤルカスタマーが育っていく。

 2つ目は、統合したデータをAIが解析し、一人ひとりの「今まさに知りたい情報」を先回りして届けることだ。ここで鍵になるのが、商品だけでなく記事や動画などのコンテンツまで含めたレコメンドである。商品だけを薦めても、まだ購入を決めていない顧客には響きにくい。その時々の関心に合ったコンテンツを届けられるかどうかが、先回りの精度を決める。

 この実現方法は後述する。まずは、すでにECのメディア化に取り組んでいる企業の事例を紹介したい。

体験と興味で購買につなげる、アルペンと池部楽器店

 W2は、現在約1,100社と取引があり、ヘルスケア/健康食品、化粧品/美容、アパレル/雑貨、食品など、幅広い業界の支援を通し、事例やノウハウの蓄積を進めている。ここでは2つの事例にフォーカスしよう。

アルペン

 アルペンは「Alpen Group Magazine」というメディアサイトを運営している。同サイトはW2のプラットフォーム上で、ECサイトと同一のデータベースを用いて構築されている。ECとマガジンという2つの仕組みを持ちながらも、データベースが統合されているため、一体として機能している点が特徴だ。マガジンには特集記事やコラムなど、3,000〜5,000点規模のコンテンツが集約されている。

Alpen Group Magazine(タップ/クリックすると拡大します)

 Alpen Group Magazineの効果は、購入への転換(コンバージョン)にとどまらない。サイト訪問時には「読み物」として購買意欲を喚起し、情報を収集できる場としての役割も担っている。購買行動への接続だけでなく、繰り返しサイトを訪れてもらう仕組みとしても機能しているのだ。

 スポーツアパレルのユーザーが持つ特徴として、一つの入り口から複数の興味・関心へと顧客を導けることがある。たとえば野球目的で訪れた顧客がサッカーの情報を閲覧したり、マラソン関連から野球へと関心が広がったりする。メディアコマースを取り入れることで、「目的買い」から共感・興味・体験を起点とした購買体験の提供へシフトしたのだ。

池部楽器店

 池部楽器店は「見て・学んで・買う」という体験を一つのWebサイト上で完結させることを目指し、動画メディアとECを統合したプラットフォームを構築している。同社のサイト「イケベエンターテイメント」には動画コンテンツが豊富に盛り込まれており、動画視聴から商品閲覧、商品情報の確認へと自然に流れる導線が設計されている。

イケベエンターテイメント(タップ/クリックすると拡大します)

 取り扱う商品には由来やストーリー性のあるものも多く、その背景を伝えるコンテンツを介して購入に至る仕組みとなっている。限定コンテンツの提供も行われており、こうした取り組み全体を通じて、LTVの向上とファンの育成を促進するメディア型のサイトとして位置づけられている。

W2は、なぜメディアコマースを実現できるのか?

 では、W2はなぜメディアコマースを実現できているのか? 鴨下氏は「ECプラットフォーム×統合データ基盤×AIエージェント」を一気通貫で保有しているのはW2だけであると強調しつつ、理由を3点に整理した。

 1つ目の理由は、商材や運用体制に合わせて柔軟に対応できるECプラットフォームを保有している点である。AIエージェントはデータがあって初めて成立するものであり、判断・実行・最適化のいずれもデータなしには行えない。W2はECカートシステム、すなわちECのデータ基盤を提供していることから、顧客情報・購買情報・問い合わせ履歴・ページ閲覧情報といった一次データを保有できる点が強みとなっている。プラットフォームには、AIを組み込んだ機能が1,000以上標準搭載されており、大規模なカスタマイズにも対応が可能だ。

 2つ目は、あらゆるチャネルデータを統合管理するデータ基盤を持つ点である。ECに限らず、店舗やSNS、基幹システムなどのデータを一つの基盤に集約することで、AIエージェントが判断・実行・最適化できる。たとえば閲覧履歴や購買履歴に基づくレコメンドの最適化や、サイト内に適切なコンテンツが存在しない場合のAIによる自動生成などが可能だ。生成コンテンツは、必要に応じて人が最終確認した上で公開することもできる。

 3つ目は、データとAIを活用し、顧客に対して先回りした情報を届ける、いわゆるOne to Oneのパーソナライズを実現するAIエージェントを備えている点である。加えて、システムの提供にとどまらず、グループ内の戦略コンサルティングファーム(アップグロース)や実行支援・実務サポート(ブランデックス)により、戦略立案から実行までを一気通貫で支援する体制を整えている。

自社ECを大きく進化させるW2のソリューション群

 W2が展開するプロダクト/ソリューションをより詳しく見ていくと、EC本体パッケージにあたる「W2 Commerce」と、AIおよび統合データを活用したパーソナライズ・分析基盤であるAIエージェント基盤「W2 SmartHub」の2つを掛け合わせる形になっている。

W2のソリューション群(タップ/クリックすると拡大します)

 W2 Commerceには、BtoC向けの総合通販サイト、定期通販・サブスクリプション、法人取引向け、そして海外進出を支援するサービスプランと、業界や商材、運用体制に合わせた柔軟なプラットフォームが用意されている。

 W2 SmartHubについては、大きく3つの特徴がある。1つ目は、生成AIや検索AI、インサイト分析などをストアプラグインのように追加でき、個別開発を要さず検証から実稼働までの期間を大幅に短縮できる点(AIの即戦力化)。2つ目は、プラグイン・API Gateway方式により、新たなAIや外部サービスの登場時にも本体の大規模な入れ替えなしに追加実装ができる、高い拡張性。3つ目は、購買データ・会員情報・行動ログに加え、オウンドメディアのコンテンツデータまでを統合し、散在するデータを資産化していく点である。

 これらは「集める・さばく・選ぶ」という一連の作業を、一つのデータ基盤の上でAIが担う仕組みとして位置づけられている。

 鴨下氏はセッション内で具体的なプラグインの活用例を紹介する。たとえば、ベンチマークとする競合サイトのコンテンツやキーワードをAIが分析し、自社に不足しているコンテンツを可視化した上で、キーワード選定から構成・本文制作、公開後の診断・改善までを一気通貫で支援できる。

 また、協調フィルタリングやコンテンツベース、ニューラルエンジンなどを組み合わせる一般的なレコメンドに加え、W2の特徴として、商品だけでなく関連するコンテンツ(特集記事や商品の背景にあるストーリー、動画など)までをレコメンドできる。購買のきっかけづくりと顧客のロイヤル化の両方を後押しする狙いがある。

コンテンツ×データ×AIが、AI時代の競争優位をつくる

 さらに、今後リリースを予定している機能として、AIによる顧客ペルソナの自動生成・分類の仕組みが紹介された。蓄積されたデータをもとに、AIが最大1万通りのペルソナを生成し、顧客がどのペルソナに該当するかを自動判別した上で、ペルソナに応じたコンテンツ推奨やクーポン発行などのアクションにつなげられるという。属性設定による従来の手法とは異なり、あらかじめ定義された属性ではなく、AIが生成したペルソナを起点とする。

 各社の状況や課題に合わせた手立てが準備されていることを示した鴨下氏は、最後に改めて、自社ECの戦略を見直す重要性を伝える。

 「ECを『売る場所』から 『売上を生み出すメディア』へ転換し、コンテンツ・データ・AIを掛け合わせることで、AI時代における競争優位を築いていくことが求められています。これは機能の追加ではなく、EC戦略そのものの転換です。蓄積されたデータが次のコンテンツを生み、新たな売上につながる、成長循環を作っていくことが重要なのです」(鴨下氏)

 自社のECサイトは売るだけのECになっていないだろうか? 今一度考え直したくなるセッションとなった。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:W2株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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