GO:訴求を「タクシーの請求書払い」に一本化し、社内の共通言語に
富家:中西さんが進めたことは、シンプルですね。「GO BUSINESS」の訴求を「タクシーの請求書払い」に一本化した。
中西:まずは顧客が一番価値を感じているのは何かを掘りまくりました。プロダクトが最初にできた背景も事業側に聞きました。最初は1つの課題を解決するためにつくるので、一番シンプルなはずなんです。
訴求の一本化という方針を決断したのは私ですが、入社直後の人間が合理的に話すだけでは信頼してもらえませんから、1on1でしょうもない話をしながら人としての関係を築くところから始めました。ただ、それだけでは「話しやすい人」で終わってしまうので、裏で戦略を詰めて徐々にその側面を見せていく。そうやって、みんなで決めたプロセスにしていきました。
富家:訴求を絞ってから、数字はどう変わりましたか。
中西:訴求をそろえたうえで100本以上のクリエイティブを検証し、勝ちパターンを見つけました。社内で成果が出づらいとされていたMetaのディスプレイ広告からもリードが取れるようになりました。2025年3月の切り替え前後6ヵ月の平均で比べると、CPAは33%改善し、契約社数は20%伸長しています。
中西:絞るのは怖いんですよ。いろいろ言いたくなるので。でも、研ぎ澄まして言えないということは、プロダクトと顧客の解像度が低いということ。マーケターとして掘るべきポイントだと思います。
富家:変わったのは、顧客への発信だけではなかったそうですね。

中西:広告で見つけた勝ち筋をLPやチラシ、展示会にも展開しました。そして「タクシーの請求書払い」が、営業や外部パートナーまで含めた社内の共通言語になったんです。

中西:お客様がサービスを理解したうえで問い合わせてくれるので、インサイドセールスも営業も楽になり、すべてのスループットが良くなりました。まさにここがボトルネックだったんです。
富家:シンプルにした結果、他社と同じことを言ってしまうということはないんですか。
中西:それはプロダクトで勝てていないということです。最近は「Who/What」なんて古いという雰囲気もありますが、なめてはいけない。そこさえそろえ続ければ、すべての工程が楽になります。
富家:突き詰めて言語化した結果、他社と同じで、しかも負けるなら、誰に何を売るのかがずれている可能性があるということですね。
中西:そうですね。市場での立ち位置や戦略から見直す必要があります。
AIのためではなく、やるべきことを人と続ける
富家:最後に、マーケティング施策で一定の成果を上げてきたお2人におうかがいします。
マーケティングは「ファンクション」のままでいいのか。そしてAI時代、マーケターに最後に求められるものは何なのでしょうか。
中西:皆さんがどちらでありたいのか、というのが一番重要だと思います。機能として突き詰めていくのか、経営にチャレンジしていくのか。
その前提ではありますが、経営としてのマーケティングができる人材は、市場価値がかなり高い。AIが効率的に伝え、獲得する部分を担うようになるからこそ、Who/Whatと市場の解像度を上げられるマーケターが求められると思います。
岡部:ファンクションのままではもったいないですよね。ただ、一般社員が他部門を巻き込むなら、海外部門の件で学んだように、相手がきちんと評価される形で施策に組み込むことが重要だと感じています。機能的なところはAIが担っていきますが、「この人とこの人をつなげたら面白い」というつなぐ力は、絶対に残るはずです。
会社の規模で進め方も違うでしょう。ただ、迷ったときに「技術的な障壁がなくなったら、自分はピュアに何をしたいのか」を考える。それが一番大事なのかなと思います。
富家:先日、GoogleでAIに携わっている方から「AIに引用されるために何かをする必要はない。AIに関係なくやったほうがいいことを続けてください。そうすれば、AIは正しく情報を参照するようになる。短期的には好ましくない引用もあるけれど、中長期で改善されていくので一喜一憂しなくていい」とうかがいました。
そして、それはマーケターだけでは完結しません。現場が何に困っているのかを確かめ、「誰に・何を」をそろえ、人を巻き込んでいく。それこそが、ゼロクリック時代のマーケターの仕事なのだと思います。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。
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