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「UNBOUND 2026」現地レポート

センスをAIに外注するな。HubSpot CMOが語るゼロクリック時代の新戦略

 快晴のボストンで、HubSpotの年次カンファレンス「UNBOUND 2026」は2日目を迎えた。この日、MarkeZine編集部は「AI Broke The Old Marketing Playbook. Here's What Replaces It(AIが従来のマーケティング戦略を覆した。それに代わるものとは?)」と銘打たれたセッションを聴講。HubSpot CMOのキップ・ボドナー氏が、長年の相棒であるキーラン・フラナガン氏とともに、新戦略を語る内容だ。本稿の前半ではセッションの一部をレポートし、後半ではボドナー氏に行った個別インタビューの内容を掲載する。

サイトトラフィック8割減でもリードを増やせたワケ

 マーケティングの等式が壊れている──壇上に現れたボドナー氏は、このように告げる。訪問の“量”が効く世界から、訪問の“価値”が効く世界へ移ったことを端的に表現したようだ。

HubSpot CMO(Chief Marketing Officer) キップ・ボドナー氏
HubSpot CMO(Chief Marketing Officer) キップ・ボドナー氏

「HubSpotのサイトトラフィックは80%減少し、1年で1億4,000万の訪問を失いました。にもかかわらずリード、つまり需要は20%増やすことができたのです。維持し、伸ばしたトラフィックには価値があり、失ったトラフィックには価値がなかったということです」(ボドナー氏)

 ボドナー氏はファネルの変化にも言及する。「認知から検討、購買までが極めて線形だった旧来のファネルに対し、AI時代のファネルは砂時計のような形を成している」というのが同氏の主張だ。

【左】旧ファネル【右】砂時計型の新ファネル
【左】旧ファネル【右】砂時計型の新ファネル

 AI検索が広がり、新たなプラットフォームが際限なく生まれることで認知の間口は広がった一方、それらから自社サイトへ人を連れてくることは遥かに難しくなった。しかし、パーソナライズや検討材料の供給をかつてないほど簡単にしているのもまたAIである。その結果、コンバージョン率は改善しやすくなっている。

「私たちは、まったく新しい形のファネルを持つ、新しいマーケティングの時代にいます。そしてこの新しい時代には、新しいフレームワークとプレイブックが必要です。あれだけのトラフィックを失ったとき、私たちは新しいプレイブックを作りました。そのプレイブックを、私たちは『ループマーケティング』と呼んでいます」(ボドナー氏)

画一化の海に溺れたくなければAIにセンスを委ねるな

 ループマーケティングの示すフレームはこうだ。人とAIが力を合わせてストーリーを表現(EXPRESS)し、オーディエンスに合わせて個別化(TAILOR)する。それを様々なチャネルへ展開(AMPLIFY)し、リアルタイムで進化(EVOLVE)させていく。この一連の流れを繰り返し実行することで、次に回すループがより良い結果を出すようになるという。

ループマーケティングの概念図
ループマーケティングの概念図

「1つのキャンペーン、1つの施策でループを1周回す。それが時間とともに複利で効いてきます。結果はどんどん良くなっていくはずです」(ボドナー氏)

 ループの最初の段階であるEXPRESSにおいて、ボドナー氏が鳴らしたのはAI生成コンテンツが溢れかえる「画一化の海(sea of sameness)」への警鐘だ。誰もが同じAIツールを使える現代、マーケティングの難所は「作ること」から「何を選ぶか」へと移った。

「制作コストがゼロになったとき、値段がつくのは判断力だけです。AIが出すアウトプットは学習データの中央値に過ぎず、そこは競合全員が住む場所です。センスをAIに外注してはいけません。自分のセンスをAIに注ぎ込むのです」(ボドナー氏)

 同氏の言うセンス(taste)とは、何が顧客の心に響くかを事前に見抜く力を指す。AIにセンスがないからこそ、人間が独自のセンスと判断力を提示しなければ、差別化は成し得ない。

 人間のセンスを提示する具体的な方法が、自社のブランド理念と顧客理解を明文化した「テイストプロファイル」の構築だ。これをAIに事前に読み込ませて生成を行わせることで、AIは他社には真似できない自社だけの成果物を生み出す強力な相棒となる。

「マーケティングでは、こうしたものをブランドスタイルガイドと呼んだり、誰も読まないフォルダの奥に眠るポジショニング資料と呼んだりしてきました。しかし、テイストプロファイルは生きて呼吸する成果物です。マーケティングをするたびに更新されますし、顧客について学ぶほど良くなっていきます。AIが何かを作るたびに、作る前にそれを参照するのです」(ボドナー氏)

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テックの発展にともない“つながり”を求める人々

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/10/07 09:00 https://markezine.jp/article/detail/77779

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