売上を支える3つのビジネスモデル
クックパッドの売上は3つの柱(ビジネスモデル)から構成されている。1つは、「マーケティング支援事業」、2つ目は「広告事業」、最後の3つ目は「会員事業」である。

セグメント別に第12期(平成21年1月期)の売上構成を見てみると、マーケティング事業が463,424(千円)、広告事業が181,129(千円)、会員事業が87,900(千円)となっており、売上の実に60%以上がマーケティング支援事業から成り立っていることがわかる。
さて、これだけでは数字の羅列になってしまう。ここからは、個々の事業(ビジネスモデル)ごとに、それがどのようなものなのかみていこう。
マーケティング支援事業
クックパッドにおける「マーケティング支援事業」は、販売事業者(メーカー)や流通業者の持つプロダクト…例えば、食品・飲料・家電・調理器具などをレシピとタイアップさせ、商品やサービスの認知度を向上させる代わりに対価を得ることを主としている。具体的なサービスとしては、「レシピコンテスト」や「スポンサードキッチン」などがある。
「レシピコンテスト」とは、顧客の取り扱う商品を使用したレシピをユーザーから募集するという仕掛けだ。もう少しわかりやすく言えば、ミツカンという企業が自社が販売する「お酢」をユーザーに購入してもらいかつ使ってもらうために、その「お酢」をお題にしてユーザーからレシピを募集するというものだ。
この手法をとることで、以下のようなメリットが生じることになりまさにWIN-WINの関係が構築される。
【企業(ミツカン)】
- 「お酢」の認知度を高めることができる
- 購買意欲を喚起することができる
- 「お酢」の売上の底上げを狙うことができる
【クックパッド】
- タイアップの対価を得ることができる
- ユーザーが投稿するレシピを増やすことができる
一方の『スポンサードキッチン』は、顧客自らが自社製品を使ったレシピを掲載するという仕組みとなっている。
この場合は、先述の『レシピコンテスト』のように、商品を使ったレシピのお題を出すというわけではなく、あらかじめ企業側が自社製品を含めたレシピを用意するものとなっているので、広告的意味合いが強い。そういった経緯からもサービス名に『スポンサード』とついているのであろう。
同社の媒体資料によると、このようなタイアップキャンペーンを行ったことで、前年度比26倍の結果を出したという事例もあるようだ。
広告事業
「広告事業」は説明するまでもないと思うが、クックパッドの持つ各ページをメディア媒体と位置づけ、広告(純広)を掲載することで対価を得る事業である。レシピ共有・投稿サービスという性質上、食品関係の広告が多いようである。
会員事業
「会員事業」はクックパッドの持つ機能の一部を有料でユーザーに提供することで対価を得る事業となっている。
具体的には、「人気レシピ検索機能」や「レシピ保存容量増加」の2つが月額294円(税込)を支払うことで利用できるようになっている。
ちなみに、この有料会員数はどのくらいいるのか試算してみると、会員事業における第12期(平成21年1月期までの累計)の売上高は87,900(千円)とあり、この数字は期中9ヶ月間の値となっているので、月間平均に直すと1ヶ月あたり9,700(千円)となる。これに対して、月額の料金が294円(税込)となっているので、
9,700千円(月間平均売上高)÷294円(月額料金)
上記の算式で計算すると、月間の有料会員の数は約32,993人となる。つまるところ、約3万3千人のユーザーが有料会員として登録していることが推測される。
しかしながら、「会員事業」には、IDをもつユーザー(クックパッド会員)によって投稿されたレシピの書籍化印税も含まれているとのことなので、有料会員の数は3万人程度と見ておけば問題ないであろう。
特化型CGMとして今後も躍進
ここまでで、クックパッドの売上高・セグメント別売上高・ビジネスモデルを見てきたが、クックパッドの特徴はユーザーによって無限にレシピが作りだされるという点にある。調味料の量を少し変えただけでも、それは新しく創り出されたレシピとなる。そういった意味では、通常の日記などに比べコンテンツが生み出される敷居は低いと言えるだろう。
最後になるが、クックパッドを分析した結果以下のビジネスモデルの「素(もと)」が導きだされた。
- 世の中に存在している商品(メーカー品)が使われている
- その商品は消耗品である
- 組み合わせ数はユーザーによって無限である
- ユーザーによって常に創り出される
- 集合知
次なるビジネスモデルの構築や、ウェブサービスの展開を検討している方は参考にしてみてはいかがだろうか。