怪しいと思ったら専門業者へのコンサルティング依頼も必要
なお、山下氏は「手前味噌かもしれませんが」と前置きしつつ、メール運用については、配信ベンダーとの協力が不可欠だとアドバイスする。
「メール配信が本業でない一企業が、メールの誤判定状況を継続的に監視するのは現実的でないと言わざるをえません。それが本業ではありませんから。送信するメール数にも限りがあり、ISPのフィルタリングについて調査するにはサンプル数も限られ、正確な傾向が見えてこないのではないかと思います。特にシェアの大きいフリーメールサービスだと、受信用のサーバを何台も持ち、そのバージョンや設定も少しずつ異なるので、そこまで追いかけるのは難しいでしょう。すべてのフリーメールサービスのアドレスをいくつも取得し、さらにISP各社のメールアドレスも対象にして調査をするとなれば、これは結構骨の折れる作業。それを継続的に、時間・人・お金をかけてやるとなると、自社だけでやるには大変です。むしろ、私たちのような配信ベンダーを活用していただきたいと思います」
本来であれば、自社の利益に結びつけるためのメルマガに振り回され、過剰に資金を投じるのは、言うなれば本末転倒。「餅は餅屋」の諺に従うべきだろう。なお、エイケア・システムズでは、これまで蓄積した誤判定のデータに基づいて発展させたモニタリングサービス「ストッパー! 迷惑メールフォルダ入り」というサービスを提供。さらにメールの専門家だけあり、必要に応じて、コンサルティングサービスも実施している。

「このサービスでは、クライアントのメルマガの誤判定の発生状況などについてレポートします。結果をご覧になり、こんなにも不達があるのかと、驚く担当者も少なくありません。不達が多いということは、読まれていないメールがたくさんあるということ。その数が増えれば増えるほど再送など追加の費用も発生します。これは、収益性が下がるという結果につながります。欧米では既に問題視されていますが、ここ数年で日本も似たような状況になりつつあります」
特にECサイトなど、Webサイトで収益をあげている企業にとって、メールの不達は死活問題。「ストッパー!」は、ECサイトを中心に利用が広がっているようだ。
「なかには、メルマガを書いた後、普段仕事で使っているメールソフトから自分にメールを送り、届くから大丈夫だろうと判断していたというクライアントさんもいらっしゃいました。しかし、いざ本番で送信すると、どうやら届いていない。そこで、何だかおかしい、ということに気付いたそうです。当然ながら配信システムや送信数などもろもろの条件が影響して、届いていなかったわけです。やはりシステム面の問題もからんでくるので、よほどメールの誤判定問題に精通していないと、どのようなテストを実施しないといけないのかということも判断しにくいようです。私たちはそういったニーズに対して誤判定状況の調査をし、レポートを提出して、必要に応じてコンサルティングも行っています」
誤判定との戦いはまだまだ続く
「依頼を受けたあるECサイトでは、送信したメルマガのうち27%が誤判定されているということが分かりました。フリーメールアドレスの宛先が、ほとんどが不達になっていたのです。また、あるスポーツ系のサイトでは、7割が誤判定を受けていたケースもあります。ただしほとんどの事例で、技術的な課題を少し修正するだけで、大きく改善が見られました。私たちは、こういったサービスを通して、企業のメールマーケティングの効率化をお手伝いできればと考えています」
最後に、メール配信ベンダーの立場から今後の誤判定に対する姿勢について伺った。
「海外と同じような仕組みを立ち上げるのは、ISPとの関係や私たち配信ベンダー同士の競合状況などをふまえると、すぐに実現するのは厳しいのではないかと感じています。また、迷惑メールを取り締まる法律も、特定電子メール法と特定商取引法の二種類あり、それぞれ監督官庁が異なります。そういった点でも、国内で各方面の関係者が歩調を合わすことは難しいのかと。現状では、私たち配信ベンダーが誤判定についてしっかりと調査を継続して、適切なサービスを提供するしか解決法はありません。今後、我々としてはさらにノウハウを蓄積していきながら、誤判定結果のより高精度なレポーティングやコンサルティングを行っていきます。また、ますます誤判定に関する相談は増えていくことが予測されますので、より多くのお客様へサービス提供が行えるよう強化していく考えです」

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