結果までの動線を分かりやすくシンプルにする
もう1つ重要なのが“分かりやすさ”である。普段モバイルサイトを利用しない人は、画面が狭い、キーが少ないなどの理由から、モバイルサイトの操作は不便で面倒なものだと認識していることが多い。それだけに、最終的な結果にたどりつくまでの動線やインターフェースは、可能な限りシンプルで分かりやすくすることが重要となってくるのだ。
一例として、ソフトバンクモバイルの“かんたんミュージック”を挙げてみよう。これは、メールで配信されてくる音楽情報を元に、楽曲を視聴したり、購入したりできるというサービスである。
通常の着うたサイトで楽曲をダウンロードするには、まずトップページにアクセスし、キーワードやカテゴリなどから目的の楽曲を探し、詳細を表示し、視聴やダウンロードをするという手順を踏む必要がある。これはモバイルサイトに馴染んでいる人であればごく一般的な行為だが、そうでない人にとっては非常に複雑で面倒に感じてしまうものなのだ。
だがかんたんミュージックは、メールで配信されてきた楽曲の画像を選択するだけで視聴ができ、気に入ったらそのまま購入できるようになっている。装飾メールの仕組みを用いて楽曲を探す手間を省き、視聴、購入へと誘導する手順もシンプルにすることで、モバイルサイトの利用に不慣れなユーザーでも利用しやすくなっている。
結果を得るまでのプロセスが複雑であればあるほど、操作途中で放棄されてしまう可能性が高くなる。ことモバイルに馴染みの薄いユーザーを対象にするのであればなおさらその傾向は強くなるので、サイト側で結果を得るための情報を分かりやすく提供する、途中のプロセスを少なくシンプルにするなど、ロスを減らすための工夫が求められるのである。

好みの楽曲を視聴・購入するまでの手段がとてもシンプルだ
ターゲットが利用しているサービスを活用する
ついてもう1つ、彼らがモバイルで利用しているサービスを活用するということも挙げておこう。モバイルサイトの利用に消極的という人も、その多くはモバイルサイトを全く利用しない訳ではなく、必要なサービスであれば利用していることが多い。実際、天気予報や路線検索系のサービス、そしてGmailやTwitterのようなPC向けサービスのモバイル版をよく利用しているという人は少なくないのではないだろうか。
確かに、モバイルのコア層が利用しているサービスと連携しても、消極的な層に対してアピールするのはなかなか難しいかもしれない。だがモバイルの利用に積極的でない層が、日常的、あるいは積極的に利用しているサービスと連携すれば、プロモーション効果を上げることができる可能性は高くなる。
にわかに注目を集めるようになった、「ケータイ国盗り合戦」などの位置情報を活用したコンテンツも、そうしたサービスの1つといえる。そもそも位置情報系のサービスは、行動範囲が限られている若年層よりも、年齢が高く行動範囲が広い人の方がメリットを享受しやすく、モバイルサイトのコア層ではない男性サラリーマンなどが積極利用する傾向が強い。
最近ではそれらのメリットに目をつけ、位置情報系サービスと連携したキャンペーンを展開する事例が増えている。こうしたサービスを活用すれば、モバイルのコア層以外を獲得しやすくなるというだけでなく、“位置”が重要となることから、特定の地域におけるキャンペーンや販促などにも活用できるというメリットも得られる。

ハウステンボスとのコラボレーション事例(左)。モバイルのコア層以外にターゲットを広げるだけでなく、
地域限定のキャンペーンを展開しやすいのが位置情報系サービスの強みだといえる
iPhoneなどのスマートフォンを活用するという手も
同じような理由で、iPhoneなどのスマートフォンを活用するというのも1つの手だといえるだろう。
スマートフォンは自由度が高くオープン性が強い、PCを持っていることが利用の前提となることが多いなど、利用する上でも一定のITリテラシーが求められるものだ。それゆえ、通常のモバイルサイト利用者と大きく離れた層が積極利用する傾向が強い。そうしたユーザーの嗜好にマッチした取り組みを、スマートフォンを通じて展開すれば、ターゲットから注目を集めやすく、また利用されやすくなるといえる。
もっともスマートフォン利用者はPCサイト利用者とある程度層が重なることから、既にそうしたユーザーを取り込んでいる場合は効果が薄くなる可能性はある。だがスマートフォンの利用者自体が増加傾向にあるので、従来のモバイルサイトに対して消極的な層へのアプローチとして、有効となってくる可能性は高いといえよう。
今回の内容をまとめると、以下のようになる。
- モバイルサイトを積極的に利用しない層は、モバイルサイトのコアユーザーと真逆の層
- 積極的でないユーザーに利用させるには、“動機”を与え“習慣”を付ける必要がある
- モバイルの操作に不慣れなユーザーのため、結果を得るまでのプロセスは限りなくシンプルにするべき
- 彼らもモバイルサイトを全く使っていない訳ではない。普段利用しているサービスを活用するという手もある
モバイルサイトの利用に対する壁は意外と高く、特にコア層から大きく外れる男性の年配者などを取り込むのは容易なことではない。実際、多くのモバイルコンテンツのCPにとって、若年層以外に向けたコンテンツは長い間“鬼門”とされてきた程だ。
だが今後のモバイルサイトの利用を広げていく上でも、モバイルのコア層以外に対していかにアプローチし、取り込んでいくかということは重要となってくる。モバイルサイトへの正しい理解を進めるためにも、ぜひ積極的な開拓に取り組んで欲しいところだ。