じゃらん.netのビジネスモデル
冒頭で東氏は、スライドのタイトル『アクセス解析から導くSPDS』にあるSPDSの最初の“S”は、スピーディーの略で、PDSサイクルをすばやく行うという意味で、社内でこの言葉を使っていると説明した。また東氏は「今日は、データ分析のノウハウではなく、分析を浸透させることによって業務改善を行うことを話します」と講演の主題について説明し、担当するサイト『じゃらん.net』のサービス紹介をはじめた。
『じゃらん.net』は、2000年11月にオープンしたサイトで、日本全国の旅館や宿泊施設やツアー、飛行機やレンタカーの予約ができるサービスを提供している。月間のアクセス数は、多い月で450万を超える。2009年9月現在での予約受付人泊(ある宿泊施設に1泊したことを1人泊とした場合)が3775人泊、クチコミ件数が118万件、宿泊施設数が20,015軒、宿泊プラン数が601,844件と、サイトの利上状況データが示された。
同サイトのビジネスモデルは、ユーザーが宿泊施設を予約し、その後宿泊施設を利用すると料金が発生し、契約している宿泊施設から手数料収入が発生するという成約課金モデル。ユーザーに旬の地域・施設情報コンテンツを提供し、宿泊施設を検索してもらい各施設の利用につなげている。
抱えていた課題
先に挙げたビジネスモデルから、宿泊施設検索からのコンバージョンレートを向上させることが売上の向上につながっていく。そこに検索機能を向上させるために効率的な開発を行っていくことが必要とされる。東氏は「ただ、やみくもに機能開発をすれば売上が増えていくという単純なものでもありません。逆に言えばコンバージョンレートが下がることが、売上ダウンに直結します」とした。
以上を踏まえて東氏は、「サイトの企画を検討して、それに分析し、どう開発をしていくか定義し、リリースをしたら効果を振り返り、次の企画に繋げていく。これは我々が現在とっているフローです。以前はこうではありませんでした」と、現状の機能開発フローの説明を行うとともに、以前の状態を解説した。
業務改善以前は、新機能開発を承認するための場面で、企画担当者と決裁者の間で何度も差し戻しがあったという。東氏は、「例えば企画担当者が、『こんな機能付けたらきっと便利ですよ』と提案しても、部長から『本当にその機能はニーズがあるのか?』と突き返すというやりとりを繰り返していました。こういったやりとりを繰り返すことでスピーディーに機能開発が行えないのが課題でした」と、担当者の提案の質が低いことに起因する悪循環があったことを説明した。