複数メディアの特徴を活かすには?
インターネットは消費者にとって欠かせないメディアになった。言い換えれば広告主にとっても欠かせないメディアになったと言えるだろう。しかし、広告主の課題のすべてがインターネットだけで解決されるはずがない。多くの広告主は、さまざまなメディアを活用して多角的に課題を解決しようとする。
複数メディアの特長を活かす手法はメディアミックスやクロスメディアと呼ばれ、キャンペーンの成功のカギとなっている。複数メディアを組み合わせるときに注意しなければならないのは、キャンペーンとしての統一感を確保することだ。なぜなら、バラバラの向きのベクトルを束ねても大きな力にはならないからだ。
テレビで見た広告、新聞で見た広告、インターネットで見た広告の表現に統一感があれば、そのメッセージは効果的に刷り込まれるだろう。しかし、統一感さえあればそれでよいのだろうか? あえて統一感のない仕掛けが有効なこともあるのではないのだろうか?
インターネット広告は、表現の「制約」が少ない
広告の統一感、一貫性、連動性、いずれも似たような意味であり、ブランドのアイデンティティを担保するうえでは必要なものだ。行く先々で言動が異なる人間は信頼されないが、それはブランドも同じである。しかし、行く先々での言動がまったく同じ人間はどうだろう。何度も見聞きした言動を繰り返すばかりでは、その言動そのものは刷り込まれるが、それによって心は揺さぶられない。多面的にその人間を理解したうえでないと、言動は説得力を持たない。
つまり、テレビ広告や新聞広告の表現を焼き直しただけでは、インターネット広告の効果を最大限には引き出せない。もし、単純に広告認知の獲得が目的であれば、それでもよいだろう。しかし、クリックしてもらいたいのであれば、それだけ魅惑的な表現にしないといけない。テレビ広告や新聞広告は、その限られた時間や空間で表現を完結させることが求められるが、インターネット広告は違う。むしろ完結せずにじらして、続きを知りたいと思わせるような表現にすることでインターネットの特性を活かせるのではないだろうか?
また、テレビ広告や新聞広告の表現は起承転結で構成されていることが多いが、そのような悠長な構成はインターネットには向かない。できるだけ広告を避けようとしている消費者に対しては、まず結論から伝えるべきだ。それぞれのメディアの特長やそのメディアを利用しているときの心理に注目して、広告の表現は変更する必要がある。