学生募集で苦労している点を教えてください
我々の顧客とは「常にニーズをウォッチすべき対象」のことを指します。そうなると、我々が対峙する顧客とは、高校生や他の専門学校、大学の学生といった入学対象層だけに限りません。
求人企業や、学校教職員が考える技術者のあるべき姿も常にウォッチすべき対象、つまり顧客なのです。
なぜ、顧客をそこまで広げて考えなければならないのか? と思われる方も多いと思います。
例えば、洗剤メーカーの主顧客は主婦層であり、その主婦層は自身の責任でもって明確なる意思決定を行い、特定の洗剤を購入しています。ところが、学校には、洗剤の性能と価格が生みだす値ごろ感のような指標が有りません。入学志望者や在校生といった顧客は、各学科の出口(卒業後)と密接に繋がった産業界に対する知識や、どの学校、学科へ行くべきかを決める明確な判断基準やそれに必要な充分な知識を持ち合わせない場合が殆どです。
このような顧客の言う事だけに耳を傾けていると、学校の運営は右往左往していきます。
また、産業界が必要とする人"財"のニーズやボリュームも常に変化して行きます。 これに合わせた人"財" 供給も我々の大切な役目です。それを実現する為には、我々は常に産業界の動向や情報を収集し、在校生や入学対象者に対し啓蒙の意味も込めてこれを提供していかなければ、職業の受給バランスは保てません。
このような取り組みや、産業界との密接な繋がりは、本来、教育目的の実現から導き出されたノウハウではありますが、入学対象者からすれば大きな魅力と捉えられているようで、結果的にはマーケティングの要所となっています。
もうひとつ、大学と同じ様に(真の大学と呼べるところに限りますが)、教員の研究や教育の成果とも言える卒業生が、産業界を中心とした社会をその有るべき姿へとかえて行くのだと言う気概も、高等教育機関の魅力の一つであり、ここも常にウォッチし、取り纏め発信していくべき事項だと考えます。
想像に易いと思いますが、これら全てのバランスをとる為には相当のマンパワーと時間を要します。
車の性能や、洗剤の効能に対するコストパフォーマンスの様に定量的には計り難い指標によって、ブランドを形成していなければならない。爆発的なヒット商品を生み出す事に専念すれば良いというわけでない。
より効果の高い事から順番に、地道な情報発信の積み重ねを行っていくしか無い、という点ではないかと考えます。
マーケティング担当者を育成はどのようにして行っていますか?
独自での教育は難しいので、前出のコンサルティングをフルに活用しています。定期的な計画の見直しと進行の会議に入って頂き、共に考える機会を極力多く設けています。
学校内のPR担当者に必要な素質・資質に関してご意見はありますか?
まずは広報を営業、宣伝から切り分ける頭を持つことです。
その上で、営業活動や宣伝活動の骨子に大きな影響を持たせていく広報指針は、学校の教育理念と直結する物として考え、定め、動く事だと思います。
実際に行うのは、運営トップ層の理解が有ればそう難しいことではありません。必要なのは、学校の広報指針のもとブランディングを押し進めていくという、トップの意思決定だと思います。
他校との差別化で心がけていることはありますか?
Webマーケティングに関する部分と関係していますが、教育理念の達成によるブランディング強化に務めることです。そのためには「日本一ニュースを発信する学校」となる事が今の目標です。
Webサイトや、それと連動したイベントなど、発信方法は様々ですし、ニュースを生み出すのは、講師であったり、広報であったり、前にお話したように、私自身のブログでもいいわけです。
そもそも、社会に出て行く卒業生自体を、ニュースと捉えるなら学校というシステムが、ニュースを生み出す場所として、もっと有効に機能して良いと思います。
そして、数々のニュースをもとに、学校全体の顔が更に良く見える学校にして行きたく思います。
学校運営において、すべらないために心がけていることはありますか?
2つ有ります。
学校理念を達成する為には、やらなければならない事は山積みです。 全てをこなす事は不可能に近い。さらに新たな事を始めるのであれば尚更です。やるかやらないかの意思決定は最も大事な校長の仕事だと考えます。
実施するかどうかの判断基準に、それは素晴らしく良い取組みであるかどうか、に加え、広報に直結するのかを考えます。
もうひとつは、業務の廃棄です。現場が動き易く、新しい事をどんどん取り込んで行ける様、優先順位が低い業務は廃棄し、これの予備軍となる様な新たな仕事は極力回さない様に心がけています。
貴校が今後目指す姿を教えてください
学校理念「人間力と品位を有する専門職業人の育成」を達成しきった時の映像表現(=ビジョン)は以下です。
「誇りと自信に満ちあふれた卒業生が社会のあらゆる場面で活躍し、誰もが本校の教育力の高さを認知している」
全神戸電子卒業生には、常に地球と人間社会のあるべき姿を思い描き、そこへの到達に向けての貢献を果たすことで、自分を立したと実感してもらえるようになって欲しいと願っています。
インタビューをおえて
学校法人は一般企業と異なり、プロモーション領域においては特に制約がつきまとう事は容易に想像が出来る。
神戸電子のような専門学校にとっては、少子化により18歳人口が縮小にしているにも関わらず、学生募集においては競合相手は全入学時代となった大学なども含めることを考えると、以前よりも市場環境は厳しくなっているのが現実だ。
そんな市場環境にも関わらず、民間企業と違い学校法人のトップが陣頭指揮をとって、マーケティングやプロモーションを推進していった話はあまり聞かないが、神戸電子は民間企業出身の福岡校長の柔軟な思考により、他校なら躊躇してしまうような様々な試みを果敢に仕掛けている。
これらの試みが実際の学生募集にどの程度影響するかはまだ未知数ではある。ただ、様々な施策を通して「日本一ニュースを発信する学校」として、情報を絶えず外部に発信し続けることにより、得られる知見は神戸電子専門学校にとって今後の大きなアドバンテージとなってくることは確実だろう。