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多様化するモバイルビジネスの「リアル・チャンス」をさぐる! mobidec2009レポート

プラットフォームの開放による企業とのパートナーシップ強化に活路を見出すau

各種企業とのコラボレーションを推進

 auのコンテンツプラットフォームの柱であるLISMO。従来は音楽を主体としてきたが、今後は映像コンテンツも展開していく。パートナーとの連携によって高画質ビデオ配信を行うほか、DVD宅配レンタル事業も手がけることで、携帯電話を軸に利用者のライフスタイルを豊かにしたい考えだ。本や電子書籍をLISMOブランドに加え、新展開も図る。

 電子書籍の月間利用額は2年間で2.5倍と順調に推移しており、月額基本料金で契約している利用者の解約率も低い。ユーザーの特徴として20代~30代女性の平均利用額が多いことが挙げられる。当初は、ボーイズラブ系のコミックが牽引していたが、最近では文芸作品も人気を集めている。また、既存作品の電子化以外にも、ラジオ番組とタイアップして新人発掘を目的とした文芸賞を設けるなど、今後は本格的に文芸コンテンツを展開する予定だ。小説以外の写真集や雑誌についてもラインアップを拡充していく。

 LISMOで展開する音楽・映像・書籍は相互の関連性が強い。竹ノ内氏がクロスメディア展開の解説として例に挙げたのが、少年ジャンプで連載中の漫画「NARUTO」。「NARUTO」というキーワードで音楽を検索すると、「いきものがかり」によるテレビアニメ主題歌の着うたがヒットし、映像ではDVD、電子書籍ではコミックがヒットする。それぞれの権利者は別々なケースも多く、これまでは単独で展開するケースも多かったが、今後はLISMOの検索で連携させることで関連情報を表示させていくという。また、原作に音楽や映像・携帯アレンジなどを加え、パッケージ化して配信できるような仕組みも準備を進めている。

 エンタメ系のほかにLISOMで注力しているのが、スポーツ関連事業だ。日常の健康とスポーツをサポートするプログラム「au SmartSports」では、さまざまな企業とのコラボレーションや社会貢献活動を展開している。昨年に開始した「Run&Walk」は、今年になってフィットネスやゴルフなどサービスを拡大している。また、健康をサポートする「Karada Manager」では、女性に特化したコンテンツや健康関連の物販を新たに展開している。

 auユーザー3000万人すべてを対象にリーチするのは難しい。しかし、分野別に利用者をセグメントすれば話は別だ。例えば、SmartSportsの利用者150万人は、スポーツや健康に興味のある人が集まっている1つの単位と見ることができる。竹之内氏によれば、「SmartSportsはauの自社コンテンツでもあるものの、コンテンツプラットフォームを作ることを基底にしている」という。例えば、美容や健康に興味を持つ人は、食品やアパレル、健康器具などへの興味も高く、そうしたコンテンツ同士をマッチングさせることで新たな可能性が生まれる。Run&WalkのAPIを活用した新しいコンテンツの提供もありうるだろう。

 コンテンツプラットフォームは、SmartSportsだけではない。例えば、「スマートビデオ」は、携帯電話の写真に音楽や画像で構成されるテンプレートを適用することで、スライドショービデオを作れるサービス。ソニーとの連携により薄型テレビ「BRAVIA」での視聴できるほか、ドコモやSoftBankの携帯にも対応している。

 女性向けのファッション分野の施策には、髪型や洋服のスタイリングをシミュレーションできる「Myスタイリング」がある。顧客とのパーソナルなコミュニケーションができることから、さまざまなアパレル企業やヘアサロンが参画しているという。

 携帯電話番号での振り込みが可能な「じぶん銀行」も、2009年9月末の時点で75万口座を達成している。利用者数増加のため、角川グループとアップフロントエージェンシーとのタイアップにより、女優の田中麗奈をモチーフにしたアニメの政策委員会にauも参加し、ファンクラブ会費をじぶん銀行から送金してもらうといった取り組みも行なっている。

新しいライフスタイルコンテンツプラットフォームの構築

 携帯端末契約数が頭打ちの状況になる中、端末の買い替えサイクルも長期化し、新端末に対応したデジタルコンテンツの販売機会も減少傾向にある。こうした背景から、携帯コンテンツ業界には、ビジネスモデルの転換が求められている。auは、先に挙げたように各企業との連携に活路を求めている。

 竹之内氏は今後の事業の展開方針として3つの視点を挙げる。すなわち、「顧客とのタッチポイントの拡大」「オープン領域への技術の拡大」「企業とのパートナーシップの構築」である。

 タッチポイントの拡大には、auショップ店頭でのコンテンツ利用促進を行っていく。ただし、新規契約や機種変更のインセンティブとしてのコンテンツ利用では本来の趣旨とは異なるため、適切なスキームを模索しているという。また、各地域との連携強化も視野に入れている。進行中の事例として北海道日本ハムファイターズのファン向けの施策や、埼玉の地元キャラクターを使ったコンテンツなどを挙げた。

 オープン領域でのビジネス拡大では、これまでの垂直統合的スキームで培った資産を活かして、端末や課金の仕組み、アプリケーションなど、さまざまなプラットフォームをオープン化していく。オープン化によるアプリのセキュリティリスクには、事業者による推奨などを行うことで対応する予定だ。利用者のアプリ検索には、LISMOなどでノウハウのあるレコメンド機能を活用していく。料金の回収代行機能もオープンに提供していく考えだ。

 コンテンツプロバイダが、ライフスタイルの異なる個々の利用者に寄り添うためには、キャリアがさらに新しいコンテンツプラットフォームを拡大する必要がある。auの施策の一例としてはGPSのAPI仕様公開が挙げられる。以前は位置情報を測定させる部分のみ開放していたが、現状ではスタンドアロンなどさらに深い情報をコンテンツプロバイダが利用できるようになっている。ゼンリンの「いつもNAVI」などは、2008年から位置情報サービスが追加されている。

 竹之内氏は「新しいプラットフォームを皆さんもご活用ください。意外にレガシーなプラットフォームを中心にコンテンツを提供される方がまだま多いのが現状です。ぜひ、新しいプラットフォームを活用した、新しいビジネスモデルを構築してください」と呼びかけ、講演を締めくくった。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・翻訳ツールなど...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2010/01/14 11:00 https://markezine.jp/article/detail/9299

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