モバイルで陥りやすい“勘に頼った運営”
モバイルサイトの運営において陥りやすい問題点として、伊藤氏は「仮説を作ってしまうこと」を上げている。モバイルサイトはライフサイクルに密着しているがゆえに利用者の行動変化が非常に激しい。それゆえ月・週という単位だけでなく、日毎にも大きな波が起きやすいものだ。
しかしながら、企業においてモバイルサイトは新規事業に近いため、割り当てられる人数や予算が少なく、必然的にマーケティングに回す労力も少なくなってしまう。それゆえこと忙しくなると「週末は利用者が増えるだろう」「この施策をすればアクセスは伸びるだろう」などと仮説を作ってしまい、勘に頼った運営をしてしまいがちなのだそうだ。
余裕がない状況下で、アクセスデータの分析に人員や時間を割くのはなかなか難しい。だがそれをしなければ、利用者の本当のライフタイムバリューを測ることはできない。施策を打った時期に売り上げは確かに向上したものの、実際に顧客単価を向上させていたのが別の要因だったということもあり得る。伊藤氏は、一見手間がかかるように見えるが、利用者の動向データを追い、さらにリアルでの動向も確認しながら、価値を向上させていくのが一番の近道になるのではないかと話している。
こうした状況に陥りやすいのは予算が少ないということもあるが、それに加えて実際にモバイルサイトを利用している人が、運営に携わるケースが少ないという要因も伊藤氏は同時に上げている。
携帯電話の普及台数は一億台を超えているが、どのような人がモバイルサイトを利用し、どれくらいお金を使っているかというのは、実際に利用していないと肌感覚として分からないことが多い。それゆえモバイルで効果を上げたという話を聞いても、実感が沸かないそうなのだ。
