凄腕マーケティングコンサルタントが語るマーケティングの近未来
マーケティングコンサルティング事業を行うサイコス株式会社の代表取締役 青葉哲郎氏(写真右)の前職は、人材紹介大手リクルートエージェントの経営統括ユニット マーケティング企画部部長だ。青葉氏は同社内で「Web構造改革」を手掛けた人物である。
青葉氏がリクルートエージェントで取り組んだWeb構造改革とは、これまで実施していたネットマーケティング戦略の徹底的な見直しと、事業全体の最適化を行った。驚くべきはそこで得られた成果だ。
リスティング(検索連動型広告)のコストを4分の1にし、SEO(検索エンジン最適化)対策で25位だった検索順位を短期間の内に4位まで押し上げた。また全社視点での改革により、新ブランド「転職に人間力を。」を立ち上げ、豊川悦治をメインキャラクターに据えTVCMを実施、認知の底上げおよび登録者を増加させ、年間で数億円規模のコスト削減を成功させた。なぜ、青葉氏がこのようなこと短期間に実現できたのだろうか。
青葉氏のリクルートエージェントでの実績は、『経営戦略と結び付かないWeb構造改革は失敗する』ITmediaエンタープライズで詳細に解説されています。
青葉氏は、マイクロソフト、インテリジェンス、リクルートエージェントという一貫して事業主側の立場からマーケティング業務に関わってきた。その経験から、マーケターは今後
- マーケティングのデジタル化
- 従来型組織の終焉と新しい組織体制の構築
- 膨大なユーザー情報の活用
の3点に対応することが重要と語る。では、青葉氏が指摘するこの3点について順次紹介していこう。
マーケティングのデジタル化
デジタル化の到来で起こる変化によって、マーケターが対応しなくてはならないことは何か? 青葉氏が言うデジタル化は、単にアナログ広告のデジタル化を指すのではなく、マーケティングプラン全体がデジタルダッシュボードで管理され最適化が図られるような、マーケティング運用の未来予想図を指している。
「今後、マーケターの業務はより増え続けるでしょう。広告コミュニケーションは、今まで以上に多様化し、高度に専門化され、複雑化していきます。分析可能なデータの増加により、そのデータを分析し改善を図りたい広告主が増え、マーケティング分野に今までにない『広告/マーケティングの見える化』ニーズが高まると思っています。小売業にPOSレジが普及していった時と同じような事が起きます」
続いて、米国の調査会社のデータによると、2014年ごろには広告宣伝費用全体の20%はデジタル広告となり、内50%はSEM広告に使われると予想されていると青葉氏は指摘。
規模はまだ小さいが、Twitter(ツイッター)やソーシャルメディア、ソーシャルアプリなどの、旧来の「広告メディア」という概念ではとらえきれないような存在の影響力が拡大していくのは間違いないという。一方、これらのメディアが台頭することにより、当然消費者(受け手)の変化も当然あらわれる。
「消費者はさらに賢くなっていきます。従来のデフォルメして伝える広告の技(見かけの安さや見せかけの情緒価値)は見破られるでしょう。既に、第一印象から本当によい物であるかどうかのコメント、アフターサービスの評価に至るまで、商品機能の一部として評価されるようになってきています。広告主が活用するメディアは、本当に読まれていて、かつ、より大きな影響や購買影響を与えているメディアが強くなっていき、同時に今までと同じマーケティングマネージメントでマーケティングを成功させることは難しいと思います」
では、今まで経験したことのないメディアの影響力が増すことで、マーケターはどのような対応をとればよいのだろうか? 青葉氏はその対応策について次のようにアドバイスする。
「対応策はとても簡単で、すべての広告やメディアを単品管理すること、つまり『広告/マーケティングの見える化』の準備をすればよいのです。小売業がPOSレジの導入で、部門管理から単品管理にシフトし近代化したように『広告/マーケティングの見える化』でようやく広告/マーケティングの近代化も始まります。マーケティング業務がより高度に複雑化していくと、広告/マーケティングをいかにマネージメントしていくかで優劣が決まり、結果企業競争力のベースになっていくと思われます」
これからの広告/マーケティングは、従来とまったく異なっていく可能性が大きい。デジタルを理解している20~30代が中心となり、データを元にした仮説思考で“何を検証し”“PDCAサイクルをいかに回していくのか”を、自ら提言し企業内で主導してやる必要が生まれてくるとのことだ。