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統括編集長インタビュー

マーケティング・ロックスターは生まれるのか?
凄腕マーケティングコンサルタントが語るマーケティングの近未来


膨大なユーザー情報の活用

 最後に「膨大なユーザー情報の活用」についての青葉氏の見解を紹介していこう。

 まず、青葉氏は「企業が持つ情報は年々膨大になっています。今後、情報がより膨大になっていくことを考えると、この分野にどう対処するかが競争力の源泉になります」と主張。つまり、各企業のマーケティング部門にとって、自社で得られる顧客情報量は飛躍的に増加しているというわけだ。

 それらのすべてを分析し、スピーディーに対応することは、従来の組織や人員体制では難しいのが現状だ。莫大なコストをかけて手に入れた情報(広告データ、顧客問い合わせ、会員情報、サイトログ、購買情報など)を活用しきれていない企業が実に多く「実にもったいないと思っています」(青葉氏)と嘆く。

 また、青葉氏は「ユーザーの声に耳を傾けることを本気でやっている会社はまだまだ少ないです」とも指摘。

 例えば、コールセンターに届くユーザー情報、Webの問い合わせログデータ、広告の計測データなどを複合的に分析できる仕組みが確立している企業は、変化への対応も円滑でサービス開発、顧客対応のスピードを上げることができているという。

 今まで未着手だった情報、特にネットにある無数の顧客の声(クレームや商品やサービスリクエスト)を中心に、スピーディーに改善活動できる企業は、今後多くの顧客から支持される強い企業となる可能性が高い。

 したがって、「顧客の声をよく聞き、素早く動くチームを置き、顧客に関係する情報を一定の仕組みで集めること」(青葉氏)は強い企業にとって当たり前になるという。つまり、従来のマーケティング・プロセスに執着するのではなく、変化を恐れず柔軟に対応していくことが求められるというわけだ。

ネット時代に適応した“新しいマーケティング”の構築が急務

 ここまで「マーケティングのデジタル化」「従来型組織の終焉と新しい組織体制の構築」「膨大なユーザー情報の活用」について詳しく話を伺ってきたが、これらの状況を踏まえ2010年にマーケターはどのような取り組みをしていくべきなのだろうか。

 青葉氏は、「この10年でマーケティングの周辺業務はすっかり様変わりをしました。また、デジタル化の影響で消費者行動も一変しています。特に、ネット世代の消費者には、従来のやり方では情報伝達や影響を与えるのが難しくなり、日々消費者は『賢く』なっています」と分析する。その変化に対応するためのポイントとして

  • データの見える化を推進
  • 企業内データを連携させ業務全体を俯瞰して検証
  • 新入社員から経営者までが協力、改善できる組織体制の構築

 という3点を意識することが重要だという。

 「変化に対応するためのポイントを3つ申し上げると、1つ目は企業内にある各セクションで得られたマーケティングデータをすべて『見える化』すること。2つ目はできれば企業内データを連携させ『部分ではなく業務全体を俯瞰してみる』こと。そして3つ目は組織全体で共有し『新入社員から経営者までが協力し改善活動できるスムーズな組織を作ること』が挙げられます。この3つに尽きると思っています」とアドバイスを送る。

 「ネット広告部門の担当者はどうしても面白いものに飛びついてしまったり、あるいは、個別の施策だけを延々と最適化し、コンバージョンだけを追求してしまいがちです」と青葉氏が語るように、マーケターは、自分の担当している個別施策だけに目が向きがちだ。

 例えば、Twitterを活用したマーケティングに取り組む際にも「話題になっているから取り組んでみようではなく、自社の戦略に照らし合わせて検討することが、大切ではないでしょうか」と青葉氏は警鐘を鳴らす。

 経営上の課題、業界特有の課題、事業上の課題、マーケティングにおける課題をそれぞれ洗い出し、個別のKPIを設定し全体最適の視点からマーケティングに取り組んでいくことが、マーケターにとっての必須スキルとなる日は、そう遠くはないだろう。

 凄まじいスピートで環境が変化する中、日々成果を求められるマーケターにとって、厳しい時代なのは間違いない。しかし、成果を出していく過程に近道はなく、ハードルを1つずつ越えていくほかないだろう。海外では、圧倒的な結果を残すマーケターのことを“ロックスター”に例えることがあるという。世間をあっと言わせる日本発の“マーケティング・ロックスター”が2010年に生まれることを期待していきたい。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/09/28 18:48 https://markezine.jp/article/detail/9918

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