臨場感が伝わる口コミ効果、即応性……モバイルのメリットは多い
モバイル・コミュニケーションの良さはたくさんある。口コミ効果も高いし、現場感やリアリティ、あるいは即応性もある。
「何か新商品が出たとします。それについて、さまざまな部員が書き込みをします。つぶやきます。それがきっかけで評判が巻き起こって、コメントを見た人がお店に来ます。それを見た部員が『すごい。こんなにお客さんが来ている』と驚きます。そうした現場の状況が、モバイルを通じてリアルに伝わってくるのです。口コミ効果がどれほどありがたいかもわかりますし、生の声で改善点もよくわかる。たとえば、部員が、『今、お店に来たら、売り切れで買えません』と書いてくる。これはお店としてはマイナスですが、その臨場感を実感できることは、モバイルならではのメリットだと思います」と高橋氏は、「謎のローソン部」を介して、社内の開発者や店舗と部員の間で意思疎通や情報の共有ができることの価値について説明してくれた。
さらに言えば、「主婦の方はパソコンを頻繁に利用できる方は少ないのではないでしょうか。モバイルであれば、キッチンでも、子どもと添い寝している時でも、少しの合間にでもサイトを見ることができます」(高橋氏)
ただ、だからこそ、形だけ整えて、適当に九時~五時で対応することは許されない。そうした意味で、モバイルサイトのウェブマスターというのは、とても大変な職務なのだと思う。真面目なだけではだめだ。遊び心も必要だし、キャラが立つことも重要だ。それだけ属人性の高い業務なのだ。
「友達にメールを打つときは、その人のことを思い浮かべて打つじゃないですか。それと同じですよ。その人の顔が見えないといけない。そうした親近感がないとだめだと思います。部員のみなさんもおそらく、ローソンにメールを打っているのではなく、謎ローの『ち☆ひろ』という人間にメールを打っているんじゃないかな、と思うのです。私は開発担当者やマーチャンダイザーの名前もサイトに出します。すると、部員も、その人たちに向けて意見を言うようになるのです」(高橋氏)
こんなケースもある。朝食について調べたかったので、朝食時に「すみません。今、何を食べましたか? 教えてください」という内容のメールを出した。これもモバイルならではの調査だろう。パソコンであれば、メールを見るのが夕方かもしれない。
「リターンの率がすごく高かったです」(高橋氏)。モバイルならではの即応性である。割引クーポンを送ったわけでもないのに、「これからローソンでサンドイッチを買ってきます」という返信をくれた部員も多数いたそうだ。
「入部時に、メール配信に関するパーミッションは部員からもらっています。メールの配信は不定期ですよ、と。だから、まあ一応早朝でも夜中でもメールは送っていいわけです。とはいえ、そんなときに送るメールは、結構おもしろい話でないと送りませんけどね」と高橋氏は笑う。これぞ部員との信頼関係があるからこそ、であろう。
たとえば、「レジで金額を出してもらったら偶然七七七円でした。店員さんもくすっと笑ってしまって、いい感じでした」という投稿があったそうだ。すると、別の人が、「それはいいことを聞きました。気になる店員の子がいるので、今度やってみます」「こう買うと七七七円になりますよ」というふうに部員同士の会話が弾む。
そう、これはもうSNSの場と同じ、コミュニティなのだ。そうやってローソンに対する部員のロイヤルティは高まっていく。そして、その輪がリアルにも広がっていく。部員の中には、クルー(店舗のアルバイト)もいる。もちろん、社命ではなく、一個人、一ユーザーとして参加している。
「部員にとっては、自分の家や会社の近くにあるローソンが〝ローソン〟なのです。そのローソンがよくなってほしいわけです。そこがフランチャイズ・システムの難しさではあるのですが、仮にクルーが部員であれば、私が新商品情報を出すと、彼らは開発秘話を知っているので思い入れが強いわけです。だから、ものすごく売る努力をしてくれます。それでたとえば、〝謎ロー〟で話されていたキャッチフレーズがPOPに書かれて貼ってあれば、お客様である部員は、『本当に私たちの声が届いている』とわかるわけです。商品だけでなく、そうした点も少しずつだけど、広げていきたいと思っています」(高橋氏)
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