人気商品「からあげクン」にも謎ローが活躍
食品関連のプロジェクトが多い中で、生理用品のパッケージ開発も行なった。きっかけは「コンビニで生理用品を買うのが恥ずかしい」という部員の声であった。そこで高橋氏は、社内の女性に聞いて回ったが、彼女たちは『平気』だと言う。
さすがコンビニ社員だけあって、一般の生活者とは意識のずれがあると感じた高橋氏は、資生堂の協力を得て、女性に限定したプロジェクトメンバーを募り、パッケージの開発に取り組むことにした。さまざまな意見を聞いて、二個入りでゴムバンド付きの名刺入れのようなパッケージが考案され、限定商品として発売された。
さらにローソンの人気商品である「からあげクン」でも、〝謎ロー〟の部活が生きている。
からあげクンは、定番の味以外に、これまでにさまざまな味が登場しているが、そうした中で、エリアごとに地域限定の味も提供している。東京であればもんじゃ味、九州であれば明太子味といった具合だ。
「私は関東の地域で発売している『もんじゃ味』しか食べられないので、ほかの地域のからあげクンが食べられなかったんですよね。なので部員に『あなたのマチのからあげクンのお味はどうですか?』という質問を投げかけたんですよ。すると、皆、別々の味を口にしているのに、なぜか同じ答えが返ってきたのです。それは『味が薄いです』というものでした」(高橋氏)





プリンの場合とは逆だった。濃いのではなく、薄い。そこで開発担当者に問い合わせると、「からあげクンは五個入りだから、五個食べて満足がいく味付けをしているのです」という答えだったそうだ。
「でもね、実際にこういうメールがたくさん来ているんですよ」と畳みかけた。その後、新しい味であるブラックペッパーが発売されたが、今度は黒コショウが一口目からしっかりきいたパンチのある味に仕上がっていた。このブラックペッパー、当時歴代一位の販売数を記録した。
「そうした意見は、クレームではありません。だから、カスタマーセンターに入ってくるような話ではないですよね。しかし、不満というほどではなくても、皆さんの中にくすぶっていることかもしれません。そうした本音が出てきて、それで商品がさらによくなったら、それは素晴らしいことだと思います」(高橋氏)
これが、〝謎ロー〟の存在意義であり、また、それが成り立つ距離感を支えるモバイル・コミュニケーションの大きなメリットではないだろうか。実際に集まってグループディスカッションやディープインタビューを行なうという手法も、もちろんある。それにはそれの良さがある。しかし、顔を合わせてしまえばむしろ言いにくい、あるいは意識しにくい本音が、モバイルやメールであれば伝えられるということも少なくないだろう。それが、企業とユーザーの関係性においての〝絶妙な距離感〟というものなのだ。
「商品を一から開発することだけではなくて、お客様の声、本音を聞くことで、何かを変えていくことはできるのかなと思っています。こうした事例によって、私とローソンの開発担当者とのコミュニケーションを深めることもできますし、彼らと部員との橋渡しもできます。そうすれば、いろんなことが回り始めると思うのです。モバイルの力があるからそれができるということは、間違いないと思っています」(高橋氏)
モバイルマーケティング成功事例がふんだんに掲載されている『モバイル・マーケティング 最強の戦略 企業事例に学ぶモバイル徹底活用』はSEshop/Amazonなどからお買い求めください。