【期待したこと】スクロール率は新たな定点観測用KPIになり得るか?
ページやエリアの効果測定をする場合は、直帰率やクリック率(以下、CTR)、コンバージョン率(以下、CVR)などに注目するが、これらは簡単なようで解釈が難しい。だが、さらにスクロール率を加味すると、ユーザーの心理や行動がより詳しく分かるかもしれない。
ユーザーの心理や行動を把握するためには、アイトラッキングやユーザーテストなどが向いているが、大げさすぎて定常的に実施するのは難しい。リニューアルではない継続的な運用改善のために、もっと定量的で運用負荷の低い仕組みを作っておきたい。
ヒートマップとして視線を視覚化できるサービスもあるが、ある程度経験を積んだ人間が解釈する必要があるため、標準化による全社展開が難しい。これは必要に応じて社外の専門家に依頼すればいいだろう。
一方、スクロール率は単一の指標として数値化できるので、定点観測するKPIに向いているのではないか?
【検証その1】スクロール計測効果検証のための社内調整
- スクロール解析を実践し、ソリューションの1つとしてストックする
- 社内で共有できる事例を作る
- 5月25日開催のアクセス解析サミット2010で発表できる事例を作る
今回は、この3つの目的のため、小さく動けるサイトで効果検証をしてみることにした。ただし、講演までは3週間しかない。スピード感があり、かつビジネス的な強い動機がある事業部と着実に進める必要がある。やり直しはできない。
楽天が営む40に及ぶ事業のリストを眺めながら、全事業部参加必須の分析ワークショップで熱心な質問をした担当者を思い出した。ちょうど母の日に向けた特集コンテンツを公開し、売上を向上させることが優先課題だった。その後、「特集コンテンツの売上への貢献度とSEOの効果を調べる方法を教えてほしい」という依頼を受け、カスタム変数を実装してあった。コンバージョンが適切に計測できていることも調査済みなので、解析の環境は整っている。
早速打診したところ、快く引き受けてくれた。“分析の結果分かったことをベースに一週間以内に改善を実施し、その結果を共有して全社的な横展開に協力する”という条件で、解析の設計と実装、レポート作成と考察、事例化までをフルサービスすることにした。全社的な推進をミッションとする我々推進チームと、事業の業績にコミットしている事業部側アナリストの利害が一致した。
取り急ぎ、スクロールの計測を1時間程度で実装し、ゴールデンウィークの2日前にリリースしておいた。計測用のJavaScriptファイルとアクセス解析ツールの管理者権限は集約して一元管理しているので、手配や調整で時間を浪費しないで済む。大きなサービスの場合は、ここでセキュリティ監査やサイト内の全機能の動作確認が必要になるが、今回はアジャイル(※注)に動ける。リリース後の簡単な動作確認のみ、事業部のアナリストに依頼しておいた。
ソフトウェア開発手法の1つ。参考リンク:アジャイルソフトウェア開発(Wikipedia)
