「攻めのセキュリティ対策」でCVR向上
金融機関などのサイトをブラウジングしていると、アドレスバーの背景が緑色になることがある。これは従来のSSLサーバ証明書ではなく、より厳格な発行基準をクリアしたEV SSLサーバ証明書が採用されている証拠だ。
SSLはセキュリティ対策のための技術と思われてきたが、従来のものよりも視認性がよくなったことにより、EV SSLでは「ユーザーを安心させる」効果が強まった。その結果、副次的にコンバージョン率(CVR)の向上にも効果を発揮するようになってきたという。
日本ベリサイン株式会社のSSL製品本部ダイレクトマーケティング部 マネージャー 成生真弓氏は、MarkeZine Day 2010 OsakaのセッションでEV SSL導入の成功事例を紹介。「攻めのセキュリティ対策」でCVRを向上できるとし、セキュリティ対策に対する発想の転換を促した。
ベリサインと言えば、SSLサーバ証明書の国内最大手。ネット通販上位20社の80%が同社のSSLを採用しているという。
成生氏はそんな同社の概要について触れた後、「『セキュリティのベリサインがどうしてMarkeZine Dayに?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本日は『攻めのセキュリティ対策でWebサイトのCVRを向上させる』という趣旨でお話をさせていただきます」と切り出した。
成生氏はまず、CVRを向上させる意義を説明。訪問者数1万人・申込フォームからのCVRが5%のサイトで申込数を2倍に増やしたいのなら、広告予算を増額して訪問者数を倍の2万人に増やすか、申込フォームのCVRを2倍にすることで申込数を2倍にするアプローチがあるとした。
「お金を使って訪問者数を増やすのに対して、申込フォームの改善は持続的に効果を発揮する」として、申込フォームのCVRを上げる方向性に目を向けるべきだとした成生氏。CVRを上げる1つの手段として、EV SSLの導入を紹介した。
ネッット購買の決め手は商品価格よりサイトの安全性・信頼性
EV SSLを導入した成功事例も多数出始めている。トレンドマイクロは更新完了率が8.4%向上、ライオンでは導入の有無でCVRに10%の開きが出て、オイシックスはEV SSLを導入して新規購入率が16%向上したという。
ではなぜSSLをEV SSLに切り替えることでCVRは向上するのだろうか。
その理由は、ネットショッピングの際、サイトの信頼性が重視されているからだと成生氏は指摘。マクロミルによる「ネットショッピングの利用実調態査」のレポートなどをその裏付けとして示し、購入するサイトを選ぶ基準として84.5%のユーザーが信頼性をトップに挙げていると述べた。
続いて、ネットショッピングをしないユーザーが抱いている懸念について言及。総務省の通信利用動向調査を引き合いに出し、ネットで買い物をしない理由の第3位~第5位に「クレジット番号情報を流すことに不安がある」「商品の受け取りや返品などで信頼できない」「個人情報の保護に不安がある」といった回答が挙げられているとして、セキュリティに対する不安がサイトの売上を阻害する要因になっていると分析した。
それらは、ネットユーザーが日々報道されるネット犯罪に恐怖を覚えていることが背景にあるのではないか、と成生氏。偽サイトに誘導する手口として、フィッシング詐欺、DNS キャッシュポイズニング、SEOポイズニングなどが用いられており、そうしたネット犯罪に対する不安を積極的に解消するサイト作りもCVRの向上に必要だ、と訴えた。