Check→Actionのポイントは“正しい高速化”
さて、Plan→Do以降の工程である、Check→Actionのポイントについて武井氏は「Check→Actionを“正しく高速化”すること」と主張した。市場変化のスピードアップ、高速サイクルに適したネットという媒体特性、成果が問われる時代背景などから、PDCA全体の高速化が急務だとし、そのためにもCheck→Actionの工程を高速に回すことが、長期的な成果を上げることにつながるという。
しかし、この高速化で陥りがちなのが、外部依存、データ依存によるシナリオなき改善。Plan、KPIをもたずにCheck→Actionを繰り返すことで、成果が飽和し、縮小均衡に陥ることさえでてきてしまう危険性があると武井氏は説く。具体的には、ユーザーに対する仮説なく、ただLPOやA/Bテスティング、またCPAの追求をくり返した結果「かえって効果が逓減してきたという相談が数多く寄せられた」という。
この“よくある高速化”に対し、“正しい高速化”とは、前段で立案した骨太のプラン、つまりユーザーとのコミュニケーションシナリオを評価することを指す。そのためには、無数のデータに溺れることなく成果に結びつく指標で分析することと、自社で戦略的にコミュニケーションを改善できる体制が必要となってくる。
“正しい高速化”の実現方法
“正しい高速化”を実現するためのポイントとして武井氏は、
- サイト流入経路別に入口と出口の成果を把握しシナリオを評価
- 業務効率化による分析時間の創出
という2点を挙げる。
「成果に結び付く指標を分析するために、まずは流入経路別の成果把握を行い大局観を把握します。漫然とデータをみてレポートを作成しても、施策につながることはありません。まずは全体感をつかみ、問題がありそうなところを深堀していく。いきなりサイト内の細かいデータ分析を行うと、データに溺れてしまうので、このようなステップで捉えることをお勧めします」


そして外部に依存しない、自社で戦略的コミュニケーションをスピーディにチェックできる体制を構築するために、業務効率化による分析時間の創出は欠かせないと指摘する。
「時間がないというのが現場の悩み。アクセス解析ツールを使っての、データ収集から、各関係者とのやりとり、レポートの作成などに準備作業に担当者が忙殺され、本来時間を割くべき、成果を上げるための施策を出すことに集中できないのです。アクセス解析ツールに加え、広告効果測定ツールを利用することで、テクノロジーで補えるところは補う。業務負荷を下げ、考える時間を生み出すことは可能です」

例えば、サントリー酒類では広告効果測定ツール『ウェブアンテナ』の導入により、役職者は施策の成果を部下のレポートを待たず把握できるようになり、また部下はレポートをあげる作業がなくなったため、改善施策の考察に時間を使えるようになったという(参加記事:月次→週次に意思決定スパンを劇的改善 “大企業”サントリー酒類が超速PDCAを回せるワケ)。簡単に施策の成果が見えるようになったことで、全員で考えるチームへと体制までも変えてしまったそうだ。
武井氏は「効率よくPDCAを回すため、アクセス解析や広告効果測定ツールなどのテクノロジーで補えるところは補い、ユーザーについて仮説を立てたり、施策を立案するといった、マーケターにしかできないことにしっかりと時間を使ってほしいと考えています。まちがっても、データから答え(施策)が出ると思わないでいただきたいです。答えを導きだすのがマーケターの仕事であり、データは答えを導き出すための材料でしかありません」と語り、セッションを締めくくった。