Q. 現在の事業を軌道に乗せるにあたり、苦労した点を教えてください
もともと、ホットリンクはブログやコミュニティサイトの受託開発をメインとしたビジネスモデルでした。過去何度も自社サービスの立ち上げを画策していたようですが、一度もうまくいったことはありませんでした。
まず私がホットリンクに入って行った最初の仕事は、「我々は何の会社で、何を目指すのか?」という基本的な骨子を整理することでした。その上で、創業社長の内山さんや開発メンバーの悲願である「受託開発からの脱出」を目指して、社内の主要メンバーで新規事業の企画を始めたのが、2007年夏の幹部合宿でした。
いろいろなアイデアがでましたが、その中から市場ニーズにマッチしそうな(=時代に先行し過ぎない)領域を選定し、2008年1月に第1弾として「レコナイズ」をサービスインしました。しかし、はじめは全然売れませんでした。
2008年7月から、第2弾として「クチコミ@係長」をスタートしました。その頃は、新規事業の立ち上げに全社のリソースをフォーカスしたかったため、平行してすべての受託開発の受注をストップしました。
回りの先輩達や社外役員の方々は、「徐々に受託を減らすように」とアドバイスをくださっていたのですが、一気に受託開発をストップしたため、いきなり赤字経営になりました。
私自身が営業力に自信があったため、最初は営業人員の採用を強化して売上増を目指しました。しかし、まったくうまく行きませんでした。インターネット広告事業の時にはあんなにうまくいったのに、なぜなのだろうと毎日悩みました。
しかし、私自身が徐々に営業にタッチしないようになってから、販売の仕組みが少しづつ構築され、結果として売上が伸び始めました。何とも皮肉な事実でしたが、自分自身にとっては正に「一皮剥けた」経験でした。
途中で何度か資金難に陥りそうになりましたが、コスト抑制と売上アップを両立することを何とか実現し、現在に至るという訳です。今思えば、1番苦労した点は事業を切り替えるタイミングとスピード、キャッシュフローのバランスを取ること、そして、その意思決定を信じることだったのではないかと思います。
Q. インターネット広告営業と比較して、SaaSやASPの営業で大きく異なる点はどこですか?
「顧客の課題を解決する」という基本スタンスは広告営業もSaaS/ASP営業も変わりません。
ただ、広告営業と大きく異なる点は顧客単価です。SaaS/ASPは顧客単価が低いので、損益分岐までもって行く事業シナリオが最も異なる点でした。広告営業は「労働集約型」ですが、ASPは「営業効率」つまり「効率的な販売スキーム」を作ることが最も重要だと思っています。
Q. 「クチコミ@係長」や「レコナイズ」を、それぞれ競合他社と比較した際の競争優位性や差別化はどこですか?
「クチコミ@係長」の強みは3つあります。
まず1つ目は、国内最大の保有データ量です。類似サービスが足元にも及ばない規模の圧倒的な収集データ量は、非常に分かりやすい差別化ポイントです。
2つ目は、使いやすいインターフェースです。分析ツールと名の付くものは、得てして非常に使う人を選びますが、「クチコミ@係長」は誰もが直感的に操作できるような設計になっています。気になるところをクリックしていくことによって、探している情報に辿りつけてしまうような操作性です。
そして3つ目は、クチコミデータベースおよび分析技術の提供先パートナー企業による販売網です。弊社は基本的に技術の会社です。「クチコミ@係長」を使ったコンサルティング領域まで手を出すと、労働集約型事業になってしまいます。さまざまな業態のパートナー企業が、それぞれの事業特性や顧客特性を活かした販売手法を構築しているので、製品群全体としては対象顧客層を広げた形となっています。

「レコナイズ」の強みも3つあります。
1つ目は、強固なインフラです。大規模サイトの大量トラフィックをものともしないトラフィック耐性とレスポンススピードを誇ります。
2つ目は、多彩なアルゴリズムです。対象顧客をEコマースサイト運営企業に限定せず、情報提供サービスや公式モバイルCPなど、多様な業態で利用していただけるよう、さまざまなデータの掛け合わせで無限とおりのアルゴリズムを実装することが可能です。
3つ目は、拡張性です。さまざまな外部システムと接続が可能な柔軟なAPIを要しており、単体サービスだけでは生み出せない価値を創出しています。また、豊富なオプションメニューをモジュール化しており、企業ごとのカスタマイズを低コストで実現しています。

Q. 提供しているサービスで特に成功した事例を教えてください
「クチコミ@係長」シリーズをご利用いただいている企業は、多種多様です。
特にうまい活用をしている某大手企業では、自社のCM、商品、サービス内容など、多岐に渡るトラッキングポイントを設定し、週次でPDCAサイクルを回すことで競合他社との差別化戦略を物凄いスピードで実現していっています。
また、某大手広告会社でも、広告主への提案根拠を立証する「ファクト」として、消費者のクチコミデータを有効活用しており、CMを大ヒットさせていたりします。