競争の決め手は、イノベーションより効率化
統計解析やアルゴリズム開発、データマイニングを中心にビジネスを展開するブレインパッド。同社のミッションは「データの活用の促進を通じて持続可能な未来を創る」だ。
データの蓄積量が飛躍する時代において、それを的確に分析する能力は追いついていない。そこで同社では、大量データ解析技術を活用してマーケティングを効率化するためのさまざまなソリューションを展開している。
安田氏は、「イノベーション(技術革新、事業革新)はインターネットの時代において完全に真似をされてしまう」と、書籍『分析力を武器とする企業』の著者、トーマス・H・ダベンポートの言葉を引用し、業務プロセスや意思決定の効率化が競争の決め手となると語った。
同社の強みは、大量のデータから数式や関数をつくり、精度の高い予測を行う『データマイニング』と、ビジネス上の制約条件を加味して最も合理的な組み合わせを算出する『最適化』の2つの技術力。この2つを武器に企業を支援し、2004年の創業以来順調に業績を積み重ねてきた。
安田氏は、「データベースマーケティングは『やって終わり』とはならずに、その結果を取り込んで、再学習することができます。どんどんデータが溜まれば溜まるほど、予測精度、統計的な確率が高まっていくというようなマーケティングサイクルを目指します」と語り、講演の主題であるWebを中心としたマーケティング活動について説明を始めた。
PDCAサイクルが回らない理由
Webサイト設計・運営において、以前はデザインや使い勝手などの話題がメインであったが、現在のWebは、リスティング広告やアクセス解析の発展によりマーケティングの玄関となり、新規顧客の獲得や既存顧客の活性化など、データの収集と最適化を考慮した設計・運営が求められるようになっている。
Webサイトでは、集客し、訪問者には顧客行動を促進し、顧客となったらさらに育成するといったサイクルを続けていくことが必要になる。そこで担当者がやるべきことは非常に多い。数値データが大量に取得できる反面、指標も多く、収益を改善するには、何に注目し、どこから手をつけてよいかの判断が難しい。
それらの理由から、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクル実行はかけ声だけにとどまり、うまく実践できていないのが現実だろう。
安田氏は、この理由について「一番大切なのは、どの業務が機械化、自動化できるか、そしてどの業務が、人間でなければできないかの『切り分け』を適切に判断すること」と述べる。
効果的なWebマーケティングの実現に対する同社のアプローチは、担当者に依存せずデータに基づく意思決定を行うことだという。
予算はシビアになり、広告の種類が増え、媒体も細分化され、効果的なクリエイティブを試行錯誤しなければならないなど、Webマーケティングは複雑化の一途をたどっているが、同社では、機械学習して自動化できる領域としてとらえているという。
安田氏が自動化できる領域として考えているのは、次の領域だ。
- キャンペーン施策やオファーしたコンテンツへの反応率(レスポンス率)の予測
- ビジネスの制約条件 (コスト、CPA、CPC、メール配信通数 …etc.)を満たす、制約条件付き最適化計算
- 収益(売上)を最大化するオファーのタイミング
一方、人が意思決定しなければいけない領域は次の通りだ。
- バナーデザイン、キャッチコピー、メッセージング等のクリエイティブ作成
- キャンペーン施策の設計
- 商品企画(MD戦略)
こうした切り分けが、複雑化するWebマーケティングに対応するための重要なポイントであると安田氏は語る。