事例:満足寄与度からのDrive
Webサイトで囲い込んだEメール会員などは、ロイヤル顧客に育成できるのでしょうか? この命題を調査した事例をご紹介します。ある企業で、自社の会員制Webサイトのメンバーにアンケートを実施しました。その目的は、各アドレスのメンバーのロイヤリティを調べ、最終的にこの企業のブランドの製品購入率の高いロイヤル顧客と潜在ロイヤル顧客を見つけ出し、リアルな商品購入にDriveできるかどうかを検証することでした。
3つの軸の判定項目とルールの決定
まず、心情軸、深度軸、行動軸それぞれに2~3問の質問を設定し、その回答パターンをルール化、3つのスケールに落とし込みました。以下は、このようなケースにおける一般的な質問例です。
- 心情軸:メーカーに対する印象とイメージ、このメーカーとの過去の関係
- 深度軸:該当ジャンル製品全般への興味や知識の有無、こだわり項目
- 行動軸:最近1年間での購入した該当ジャンル製品やメーカーのスイッチ状況
満足度における3軸の寄与度
このWebサイトの場合は、ECのように具体的に商品を売っているわけではありませんので、購入商品傾向からインサイトすることはできません。そこで、重回帰分析を用いて、3軸がどのようにWebサイト満足度へ寄与しているかを算出してみました。その結果、ページ下の図のように心情軸への依存が突出しており、このブランドに対する思い入れがWebへの誘引要素になっていることが判明しました。このような心情軸が突出する例は企業系のWebサイトに多いもので、その企業(ブランド)への潜在的な思い入れが「サイト訪問」という行動に結びついていると考えられます。
Webサイト/ブランドイメージ/ブランドとの関係変化における3軸の寄与度
この「思い入れ」をさらに詳細に分析するため、Webサイトとブランドイメージ、ブランドと自分の関係(商品を持っているなど)を見ていきました。手法は前項と同じで、同様に心情軸の寄与度が突出する結果となりました。以上から、このWebサイトを訪問するユーザーはブランドへの固執度が非常に高く、ロイヤル顧客としての資質が高いことが判明しました。
アドレス特性
ただし、ボリューム的に最大のアドレスはこの1-1-1(心情軸1、深度軸1、行動軸1。以下同)、つまり3軸すべてが最低の層でした。会員制サイトといっても、その入会資格がフリーな場合には、よく見られるパターンです。この層に「思い入れ」は期待できません。アクティブな層でもっとも多かったのが、2-1-1や2-2-1などの心情軸が2のスケールを持つ層。この層は、ブランドへの思い入れはあるものの、シビアな評価も併せ持っています。半面、すでにロイヤル顧客と呼べる3-3-3も数%ですが存在しました。当然Webサイトへの好意度もほぼ100%に近い数値を記録しています。
ロイヤル顧客へのDrive施策
オープンなWebサイトな場合、明確な目的意識を持っていないながらも、ブランド感のみに引っ張られて訪問してきた層が多いものです。この事例でも、3軸の中ではブランドに対する依存度を示す心情軸沿いのアドレスの密度が濃いという結果になりました。このような事例では、ブランド依存度の高い層に具体的な目的イメージや行動の方向性を与えると、ロイヤル顧客にDriveすることがあります。そこで、まず仮説として心情軸の上位アドレスが潜在ロイヤル顧客層であるとし、中でも、ブランドに対する好意度は高いものの、製品を持っていない可能性の高いグループ(下図参照)にターゲットを定め、ブランドスイッチの具体策(Eメールによる製品レコメンドなど)を積極的に与えることで、3-3-3の方向へDriveが可能であると結論付けたのです。