アクセスログがない場合には、どうするか?
まだスマートフォン対応をしておらず、アクセスログからの傾向を計測できない場合には、どうすればいいのだろうか。そんなときにはアイ・エム・ジェイ社が提供する『Smart Device Matching-Score(スマートデバイス・マッチングスコア)』という独自サービスを使って、どのコンテンツをどのデバイスまで対応すべきかを判定するという手がある。

市場予測やマーケティング~テクニカルなどの多面的な観点で診断できるため、コンテンツとデバイスのマッチ度を定量的に押さえられるサービスだ。この結果を元に、マッチ度の高いコンテンツからマルチデバイス対応していけば、ユーザーの求めるコンテンツを効果的に提供することができるようになるだろう。
「マルチデバイス対応はいずれ必要になる。スマートフォンやタブレット端末は、PCやモバイルとは同一にされない、独自の利用傾向があるということを、しっかりと把握した上で、効果指標の設定・重み付けを再考しなければならない」(石井氏)
マルチデバイス化におけるデータ活用の悩み~データ収集
デバイスが多様化するにつれ、担当者の悩みとして増えてくるのが、“そもそもスマートフォンのデータがうまく取れない”というものだ。
デバイスのバージョンは今でも多いが、今後さらに増えていく。アクセス解析の数値を見て、すべてのOSをiPhoneだけで、Androidだけで、といったようにカテゴライズしていくだけでも、手間がかかるだろう。さらに、アプリ内のユーザー行動を分析したいというニーズは多いが、アプリ内はオフラインで動いているので、数値を計測することができない、というケースも発生してくる。
このような場合には、自分たちが何を知りたいのかと見極めた上で、適切なツールを選定することが大切だ。自社の環境に合わせて、計測のための設計や準備をする必要がある、と石井氏は語り、ツールベンダーが提供する3つのアクセス解析ツールを紹介した。
Visionalist:デバイス別レポート機能

- あらかじめセグメントされた端末種別の訪問回数や全体の割合を表示
- 絞り込み(フィルタ)条件として端末の指定が可能(iPhone/iPod/iPad/Android)
- 絞り込み条件を切り替えながら、経路分析、検索ワード、広告効果などの各種集計(カスタム検索)が可能
Google Analytics:アドバンスセグメント機能
- あらかじめ注目したいデバイスの条件を任意で登録できる(cf.iPhoneとAndroidをまとめて“スマートフォン”として登録)
- 一度設定してしまえば、サマリーレポートなども一瞬で出力可能

Adobe Site Catalyst:アプリ計測ライブラリ「App Mesurement」

- アプリの中にユーザー行動のデータを溜めておいて、サイトにアクセスしてオンラインになった時点で、溜まったデータを飛ばす仕組み
- サイトにアクセスした後もアプリ内からのデータを引き継いで、遷移分析が可能
マルチデバイス化におけるデータ活用の悩み~効果測定
アクセス解析をするためのデータ収集ができたとして、新たに生まれる悩みが“何を指標として効果測定すればいいのかわからない”というものだ。
ユーザーの流入経路や利用シーンが異なるスマートフォンでは、これまで重要視していたKPIを使って計測することは難しくなるだろう。そこで、石井氏が今後注目していきたい指標として、次の3点を挙げた。

「総接触回数・リピート率・顧客維持率」
スマートフォンだけでコンバージョンを上げるのは難しい。時間を置いてPCサイトから購入される場合も想定し、いつでもそばにいてライフタイムバリューを上げることに注力すべき。
「満足度・口コミ数」
ソーシャルメディア経由での流入が多いスマートフォンでは、いかに拡散されるかが重要。エンゲージメントを測る指標として、Retweet数やLike数、NPS(Net Promoter Score)などを使うと効果的。
ロイヤルティマーケティングの権威であるFrederick Reichheldが、自身の著書「The Ultimate Question: Driving Good Profits and True Growth」によって提唱している、カスタマーロイヤルティを図る指標。IMJには、日本人初のNPS認定資格保持者が在籍しており、コンサルティングサービスを実施している。
「コスト削減への貢献度合い」
オンラインマーケティングではProfitに目が向きがちだが、スマートフォン対応でユーザビリティを上げることによって、カスタマーサポートの人件費や通話料を削減する役割も果たせる。
「これらのデータを最大限に活用するためには、PCやモバイルなど、デバイス間の垣根なく最適化できる体制作りをしたり、CS部門や店舗との連携を図れる仕組み作りをしたりするなど、組織体制の見直しをしなければならない」と、従来のKPIに頼らない指標再考の重要性を説き、石井氏は本講演を締めくくった。