“better than paper” - 地図の上に何を乗せるか

一連の機能リリースには“better than paper”(紙よりも良い地図)“モバイルGoogleマップにしかできないことをやる”という理念があってのことだと牧田氏は語る。
「近年、GPS機能が非常に発達し、ユーザーの位置情報の精度がかなりあがっています。それに伴って[渋谷 ラーメン]と検索してから、お店情報に辿りつくまでの導線が以前にくらべ非常に短くなってきました。我々ができること、目指すことは、もう少し次のステップです」(牧田氏)
実際、各端末の中でも最も高機能なAndroid版モバイルGoogleマップでは、“仲間うちの口コミで評判の店”といったレコメンド情報を確認できる「おみせメモ」との連動や、自分の現在地をチェックインして友人や家族と共有する「Google Latitude」の高機能化が進められるなど、様々な試みが行われている。Googleプレイス上の店舗情報、友人や自身の嗜好に合わせたレコメンデーション、そして位置情報など、Googleの持つさまざまなサービスや情報などの既存資産を統合し、検索結果から求める場所を見つけるまでの距離をさらに縮めようと進歩している。
競合の地図サービスとの差別化を図る手段についても同じような考え方だ。ただの地図サービスには留まらず、検索関連の資産を活かして、音声検索の機能を付けたり、Googleプレイスなどの情報を検索対象にしたり、場所がよく分からなかったらストリートビューで実風景を見られたりするようにする。「地図ありきで、その上にいかにアドオンとして検索結果をうまく表示できるか」(牧田氏)が重要なのだと考えている。
「遅いより速いほうがいい」 - スピードを重視する企業文化
月に1度の大型機能のリリースに加え、細かい変更も含めれば、大量の修正が1回にアップデートされているというモバイルGoogleマップ。大規模な開発が必要な機能については、四半期ごとにどんな機能を開発していくか、年間通しておおよそのロードマップを決めているというが、1日でも早くリリースした方が良い機能については、当初の計画に縛られず、アグレッシブな対応をすることもある。
こうした開発体制の根底にあるのが、Googleが活動指針として掲げている「Googleが掲げる10の事実」という原則だ。その1つが「遅いより速いほうがいい」というもの。新しい機能をリリースするのも、ユーザーから指摘があった改善点に対応するのも、遅いより速いほうがいい。承認フローも係長→課長→部長といったように順を踏むと無駄な待ち時間が生まれかねないので、承認者が順不同で承認していけるスタイル。スピードを重視することが企業文化として浸透しているからこそ、それだけの開発案件数を回すことができているのかもしれない。
数ある開発案件の候補から、どの機能から開発するかは、プロダクトマネージャーやエンジニアの意見、そしてユーザーからGoogleのヘルプフォーラムに書き込まれた要望を踏まえて優先順位付けするという。また、バグなどがユーザーから報告された場合には、社内のコンシューマーオペレーションというチームからアラートがあがる。クリティカルな問題には即日着手。バグを修正したマイナーアップデートを1~2日でリリースすることもある。
ハードとソフトの両面で巨大な資産を持つモバイルGoogleマップが目指すもの
モバイルGoogleマップの強みの1つはスピードであることを紹介してきたわけだが、牧田氏が挙げたもう1つの強みはインフラの強さ。
どれだけのアクセスが発生しても十分に耐えられるハードインフラが整っているので、サーバの負荷を考えながら開発する必要が無い。また、モバイルGoogleマップで音声検索やGoogleプレイスの機能を取り入れているように、既に社内にあるソフトウェア資産を活かせるのもGoogleならではの強みとして挙げる。
さまざまな新機能が続々と登場してきているモバイルGoogleマップだが、牧田氏は「全然まだまだ。これからです」とし、企画段階の新機能も「たくさんありすぎて申し上げられない」と話す。最後に牧田氏、およびモバイルGoogleマップのチームが目指すサービスとはどのようなものか聞いてみた。
「毎日使っても『これは使いやすい』と思ってもらえるアプリ。シンプルで使いやすく、情報を手に入れやすい。これに限ると思うんですね。いろいろな操作をしなくても、自分の欲しい情報がそこにある。それが、究極のモバイルのアプリだと思います。Googleがいくらサーバーにデータを蓄えていても、宝の持ち腐れになってしまっては意味がない。情報をいかに欲しい方に届けるか。地図はそのために使える入口の1つなのではないでしょうか」(牧田氏)

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