Q3. 効果測定には様々な手法や方法があり、同じ名前の指標でも内容が異なることがあります。どのような方法で計測データを取得しているのでしょうか? 各方法のメリットとデメリットについて教えてください
Nielsenのマルコ・パレンテ氏
「パネルを使った計測方法とサーバーベースのタグを使った計測のハイブリッドの手法を用いている。このハイブリッドの手法を用いて4年位になる。
昨今、タグベース(ビーコンを用いた方法)の手法が台頭しているが、Neilsenではパネルベースの手法に、より多くの比重を置き、視聴者の計測を行っている。Cookieやタグを用いた計測には大きな制限があると考えている。例を挙げると、会社と自宅にPCがそれぞれあり、iPad/iPhoneでもWebサイトを閲覧する場合、Cookieベースの計測では同一人物であっても4つの異なるCookieのため、異なるユーザーと認識されてしまう。さらに自宅のPCでは配偶者や2人の子供たちがWebサイトを見ていれば、事態はさらに複雑だ。同じPCで、Cookieによれば同一ユーザーであるべきだが、実際には4人の異なるユーザーということになる。Cookieを定期的に削除しているユーザーがいれば、同一ユーザーでも複数のユーザーとして計測ツールに認識されてしまう。
いずれにしても、“Cookie = ユーザー”とはならず、Cookieベースの計測では視聴者の計測において正確さにかけるのではないかと思っている。プライバシー問題なども絡み、今後はCookieをベースとした計測が、より困難になるのではないか。そのため、我々はパネルベースの計測に力を入れている。パネルベースの計測では、集合を代表するようなサンプル標本を集め、サイトの視聴行動を計測している」
comScoreのダン・ピーチ氏
「Neilsenと同じ意見だ。ブラウザベースのCookieでは、たとえ1台のPCであってもブラウザが複数インストールされている場合、同一ユーザーによるサイトへの訪問も異なるブラウザを使っていると別のユーザーとして認識されてしまう、という問題もある。comScoreでもパネルベースのユーザー視聴データの取得を行っている。さらに、各ユーザーのマウスの動きやキーボドからの入力もデータとして取得し、ユーザーの詳細なインタラクションなど、Cookieベースでは知りえないような情報も提供することが可能になっている」
Adobeのスコット・スミス氏
「AdobeのアプローチはCookieベースだ。両氏とは逆に、パネルベースの計測ではサンプル標本に大きく依存し、必ずしも全集合を正確に表すことが難しいのではないかと考えている。例えば、アメリカで集められたサンプル標本が、南米のインターネットユーザーの行動をも反映しているかどうかは非常に疑わしい。特に地域限定のマーケティングキャンペーンにも適用できるかどうかは、疑問ではないだろうか。
Cookieベースでは、実際にアクセスしている全ユーザーの行動を追うことができる。動画の計測では、視聴した後にどこへ行くか、何をクリックするかが最も重要だと思うので、サイト全体のアクティビティを包括的に全ユーザーの行動として正確に計測することができるだろう。リファラーやサイト内の行動を基に、ユーザーをセグメントすることもできる。サンプルが少なければ、セグメントされた少量のデータでさらに全体を表すことが難しいのではないだろうか」
サンプルから視聴データやユーザーの行動データを計測するパネルベースのNielsenとcomScore、Cookie/タグを使ったビーコンベースの計測ベンダーAdobeとBrightcoveで取得方法の差と効果測定のメリット、デメリットが浮き彫りとなった。各計測手法から得られる数値を十分に次のアクションに反映するうえで、それぞれの長所、短所を理解し、包括的に解析する必要がありそうだ。どちらも一長一短で、両方を合わせたハイブリッドの製品を提供するところも出ている。
動画の効果測定は各ベンダーから様々な製品が登場しているが、「動画はWebサイトの一つのコンテンツタイプに過ぎず、あくまでもWebサイト全体の最適化のための効果測定が大切である」というのが4名のパネリストの意見であった。メディアサイトであってもマーケティングサイトであっても、サイト滞在時間を伸ばすことがミッションとなっているようだ。
