音楽イベント/布教活動でも利用
続いてO2のターニャ・タウンゼント氏が登壇。O2はTelefonica配下の携帯電話事業者でアイルランド国内で170万人のユーザーを保有する国内第2位の通信事業者である。
アイルランドの国内携帯電話市場は飽和状態が続き、ヨーロッパキャリア最大手Vodafoneの進出後マーケットシェアをジリジリと下げていた。O2は携帯電話を使ったユーザーのコミュニケーションを活性化し、ブランドの活性化を目的に2009年より音楽のイベントThe O2のスポンサーシップを開始し、2010年8月よりO2 Live and Loudブランドで音楽ライブイベントを動画で配信している。
アイルランドの携帯電話ネットワークの帯域事情から、携帯電話向けにライブ配信は実現できないのでPC向けにライブイベントの配信を行なっている。
「音楽イベントのライブ配信の目的は二つあります。一つはブランドの認知度向上。もうひとつは収益確保です」(ターニャ・タウンゼント氏)
ブランドの認知度向上においては、音楽に関連するキャリアとしてのブランドを確立すること、ソーシャルメディアを通じたブランド認知度の向上を図ることに主眼をおいていたという。
収益の面では、各イベントは有料コンテンツとして1ライブ5ユーロまたは5ドル販売されている(実際のコンサートのチケットは平均200ユーロ)。O2の既存顧客だけでなく競合他社のユーザーにも販売をし、決済の方法にはSMS、PayPalの他、Facebookクレジットが採用された。
ライブイベントへの参加チケットは事前に購入できるようになっており、イベント開始前からソーシャルメディアやブログなどを通じてプロモーションが行われた。携帯電話だけではユーザーとの会話はなかなか起こりにくかったが、音楽を通じることで、ソーシャル上でO2がユーザーとの「会話」に参加できるようになったことが最も大きな収穫であった、と語った。
最後にLDS Church(The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints/末日聖徒イエス・キリスト教会)のヴィッキー・バード氏が登壇した。
LDS Churchでは2万1千人収容できる教会本部の会場から、英語の他5ヶ国語の同時通訳付きで全世界に向けてHDクオリティでライブ配信している。
「世界中に存在するひとりでも多くの教徒のたちに、教会本部の活動をライブ配信することが最重要課題でした」とバード氏は語った。
実際に教会へと足を運ぶことが出来ない遠隔地に住んでいる人々や、体が不自由や病気で自宅や病院を離れられない教徒に視聴してもらえるようになったことがライブ配信の大きなメリットだという
「例えば、アラスカ州の場合は、これまで衛星放送で電波を受信して映像を届けようとしていましたが、山脈の影になり受信状態がいつも芳しくない状態でした。しかし、インターネットでライブ配信をするようになってからは、音声だけでなく映像も鮮明に見られるようになったと喜ばれています」
ライブ動画配信へのニーズが高く、一度の配信で18万人の同時アクセスがあるケースもあるそうで、今後はコミュニティへの帰属意識を高めるイベント等のライブ配信にも積極的に取り組んでいきたいとした。
企業におけるライブでの動画配信はまだ始まったばかりだと言えよう。ライブ動画配信を実現するにあたってかかるコストや利用するテクノロジーのハードルが急激に下がり、ライブ配信を採用しやすい環境が整いつつある。しかし、その一方で一般企業でのビジネス、ウェブサイト集客への効果が見えづらい点があることも事実だ。
しかし、ライブ配信はソーシャルメディアとの相性もよく上手くいけば一気に新しいユーザーを獲得する施策になる可能性もある。特性を活かしリアルタイムでサイトへの集客を図るのはもちろん、継続的にアクセスを得るための施策の1つとして、検討を一考してみてはいかがだろうか。
