「今すぐにソーシャルメディア活用を始めるべきか?」あるいは「時流に乗って始めてみたものの、本当にこのやり方で合っているのだろうか?」。マーケティング担当者が多かれ少なかれ頭を抱えている命題ではなかろうか。従来のデータに頼ったマーケティングだけでは太刀打ちできない、ソーシャルメディアマーケティングの取り組み方について、株式会社アイ・エム・ジェイの石井氏は見解を語った。
増加するソーシャルメディアが企業に及ぼす影響力
幅広いデジタル領域において、数多くの企業コンサルティングを行う株式会社アイ・エム・ジェイ。最近ではソーシャルメディアへの取り組みや、スマートフォン対応のコンサルティングを行うケースが、特に増えているという。
「日本のソーシャルメディア活用事例は少なく、よく名前を聞くようなところは外資系ばかり。企業活用はまだまだ進んでいないと言っていいだろう」(石井氏)
だからと言って、このまま様子を見ているだけでいいのか。半年前には4.1倍あったTwitterとFacebookのユーザー数の差は、今では1.8倍にまで縮まっているという(Nielsen調べ)。また、IMJの独自調査によると、一般的には10人に1人がTwitterかFacebookのいずれかを利用していることがわかっており、特にFacebookの伸びは著しく、年末には450万人に達すると言われる。
ユーザーの特徴として興味深いのは、TwitterユーザーのうちFacebookを併用している人は1~2割にとどまる一方、Facebookユーザーの中でTwitterを併用している人の割合は3割にのぼる点だ。
次に、企業担当者が抱えている、ソーシャル活用の悩みが紹介された。石井氏によると、大きく分けて2つのパターンに分類できるという。まずひとつ目は、「ソーシャル活用に踏み切れない」パターン。成功事例を見て検討はしているものの、自社に当てはめたときにリアルな購買につながるイメージが湧かなかったり、KPIをどこに置くべきなのかという数値的な説得要素を挙げられなかったりする場合が多い。
そしてふたつ目は、「ソーシャルを活用しきれていない」パターンだ。既にソーシャル活用を始めているところでも、多くがトップダウンでとりあえず始めてみたが、担当者のリテラシーの問題でオウンドメディアとのシナジーが生み出せていない。
石井氏は「日本では、垂直的にいろいろな部署でFacebookページを立ち上げて、ユーザーとのコミュニケーションが一貫していない企業が多々見られる。」と苦言を呈した上で、ソーシャルメディアの普及がオウンドメディア(自社サイト)に与える影響を3つ挙げた。
ソーシャルメディアの普及がオウンドメディアへ与える影響
影響1~オウンドメディアの戦略転換が迫られる
MarkeZine Dayと時を同じくしてニューヨークで開かれたCorporate Social Media Summitから、「人々がWebサイトに割く時間は減る一方、あなた(企業・製品・サービス・ブランドetc.)について話すことに多くの時間を費やしている」という一文を紹介。(原文:People are spending less time on your websites and more timetalking about you)
これは、海外ではソーシャルメディアの普及によって、オウンドメディアがこれまでの戦略を大きく転換しなければならないという、クリティカルな問題に直面していることを示している。Facebookの公式発表では、平均すると1日あたりFacebookに接触している時間は155分/人にも上るとし、日本でも今後そのような状態になっていくだろう、と石井氏は説いた。
影響2~メディア接触時間の熾烈な奪い合い
次いで石井氏は、博報堂DYメディアパートナーズが毎年公表している「メディア定点調査2011」の中から、メディア接触時間とインターネット利用の関係についての調査結果を挙げた。
人々が1日にメディアに接触する時間は、例年ほぼ変わらず5時間50分ほどであり、そのうちインターネットが占めるのは1時間53分。この限られたパイをオウンドメディアとソーシャルメディアで奪い合うということは、Facebookという巨大プラットフォームの普及は、オウンドメディアにとって脅威となるに違いない。
影響3~既存のKPIに与えるインパクト
「IMJがコンサルティングを行う十数社を総合的に評価したところ、これまで計測してきたKPIに変化が現れ始めた」(石井氏)
これら以外にも、「ソーシャル経由やリンク元なしの流入増加」「スマートフォンやタブレット端末からのアクセス数増加」などの特徴が見られ、従来のKPIが通用しなくなってきたと明かした。