経営陣のソーシャルメディアへの理解が深まった
Q. 利用している運用ツールについて教えてください
効果測定をするために、Facebookはインサイト、Twitterはブームリサーチを利用しています。Socialbankersなど米国の無料ツールも複数試しています。
Q. 効果測定はどのように行っていますか?
KGIは前述の半年に一回行う大型定量ブランド調査です。ここで、好意度がどう変わるかを見ています。KPIはファンの数、フォロワーの数、インタラクション、RT数を週次・月次のタームで追っています。
Facebookでどういうポストに対して、どういう反応が返ってくるかは、ナレッジ化するようにしています。問いかけ方や画像の種類など、細かく分析して蓄積しています。
Q. ソーシャルメディアの運用を始めて良かったことはありますか?
ソーシャルメディアは最早インフラ化していて、どこの企業でも無視できない状況になっていると思います。しかし、多くの企業では経営層が一番理解できていないというギャップが生まれてしまっているのではないでしょうか。体感して分かっていないと、いくつかのネガティブな反応にも焦ってしまい、正しい判断ができなくなってしまいます。
当社の場合、事業戦略としていち早く取り組み始めたことで、ソーシャルメディアに対する経営層の理解も深まりました。むやみに敬遠することなく、危機管理能力が高まったのが良かったと思います。
他には、キャンペーンに対する反応がすぐに分かるので、迅速に対応できるようになりました。ドンスーモキャンペーンの際、ユーザーのアクションの数に応じて壁紙をプレゼントする企画があったのですが、想定以上に速いスピードで達成してしまったのでキャンペーンの終了時間を前倒しにしました。その時に、「どんな壁紙がもらえるんだろう?」とユーザーがつぶやいてくれているのを見て、ユーザーの期待が高まっていることが分かり、当初用意していた物に加えて新規デザインを急いで作成しました。その結果、「思っていたより種類が多くてビックリ!」といったツイートを見て、思わずガッツポーズが出ました。
こういったコミュニケーションを体感するからこそ、なんとかユーザーの期待を超えたアウトプットを出したいと思いますし、それをまたユーザーが汲み取ってくれるというポジティブなサイクルが生まれるんですよね。
Q. ソーシャルメディアを使って達成したい目標は何ですか?
“Ready for SUUMO”と社内では呼んでいるのですが、「家を買う、借りるなど何かしら住宅検討のアンテナが立った時に、SUUMOを最初に思い出してもらい利用してもらうこと」がゴールです。

インタビューを終えて
先日、米IBM社が発表した調査結果によると、世界64カ国の企業のCMO(最高マーケティング責任者)の82%が「ソーシャルメディアの重要性は認識しているものの、準備は不十分である」ということが分かったそうです。世界レベルでもそのような状況の中、「ソーシャルメディアは経営戦略の重要な一角を占めている」と明言する企業に、こんなにも早く出会えるとは思ってもみませんでした。
企業のソーシャルメディア活用において、具体的な施策は多様化していくとしても、「ソーシャルメディアを軸とした統合ブランドコミュニケーション」という概念は、今後スタンダードになっていくことでしょう。これを実現するために、経営層の理解は不可欠。経営層をソーシャルの渦に巻き込む取り組みは、これ以上先延ばしのできない、待ったなしのところまで来ているのかもしれません。