コンバージョンに貢献するも、疎かにされがちなサイト内検索
サイト内検索を利用したユーザーの商品購入率は、利用していないユーザーの約3倍に及ぶ――。WebSideStoryの調査結果で、そのように記されている。サイト内検索利用者のコンバージョン率(CVR)が7.54%だったのに対して、非利用者のCVRは2.79%。購入意欲の高いユーザーがサイト内検索を利用しているのだろうか、そこから購入に至る確率は高い。
にもかかわらず、日本企業はサイトの検索機能を疎かにしがちだ。株式会社エクサ、株式会社メディックスの2社が2010年10月~2011年3月に掛けて、269社を対象にサイトのユーザビリティを調査。「デザイン」「ナビゲーション」「機能」「検索」「使用環境への配慮」の5項目を評価したところ、5項目中、「検索」の平均値が最低かつ他の項目と比較して極端に低いという結果が出てきてしまっている(※詳細はホワイトペーパー『サイト内検索機能アップグレードガイドブック』参照)。
実際、ユーザーが検索結果に対して不満を抱いていると示すデータもある。日本マイクロソフト株式会社が2010年6月に発表した「検索エンジン利用に関するアンケート」によると、30~40代の検索エンジン利用者の約6割が「検索結果に欲しい情報が見つからない」と回答。サイト内検索に限った話ではないが、「検索」領域で改善の余地が大いに残されていることの証左と言えるだろう。
ヒット件数ゼロに1~2ワードでの検索… 最適な検索結果を返せるようになっているか?
せっかく興味を持ってサイトを訪れてくれたユーザーがいるのに、適切な検索結果を返せていないようでは機会損失を招いてしまう。検索結果に対してユーザーが不満を感じるのは、いったいどのようなケースがあるのだろうか。
分かりやすいところでは、「ヒット件数ゼロ」が挙げられる。WebSideStoryが3400万件の検索クエリを同時期に調査した別のレポートによると、検索結果のヒット件数がゼロとなったのは全体の12%。商品・サービスなどの点数が少なく、サイト内の検索対象ページが少ない企業のサイトなら、それ以上になっていることも十分に考えられる。
また、大規模なサイトには大規模なサイトならではの問題が起こり得る。前述の日本マイクロソフトの調査では、1~2ワードで検索するユーザーが全体の約73%を占めるという結果がでている。わずか1~2ワードの限られた検索クエリから膨大なページを選別し、ユーザーにとって適切な検索結果を返せるのか、甚だ疑問が残るところだ。
このようなサイト内検索の問題を改善するためには、カスタマイズ可能な検索基盤を導入するという解決策がある。検索基盤の導入にはどのようなメリットがあるのだろうか。国内検索ソフトウェア市場で第1位の売上実績を誇る「Microsoft FAST Search Server 2010 for SharePoint」(以下、FAST Search Server for SharePoint)を提供する、日本マイクロソフト株式会社の延原黄司氏に話を聞いた。
検索結果のチューニングやナビゲーションの追加で効果を発揮
例えば、家電メーカーの自社サイトにおいて[デジカメ]で検索されたとする。季節ごとに新機種が登場する家電業界。ユーザーからすれば、一番新しい製品から検索結果に出てきてくれて当たり前だが、その当たり前が実現できていないサイトも多い。
また、多種多様な商品を扱うECサイトなどで同様に[デジカメ]と検索すると、製品自体もヒットするが、ハウツー本などもヒットする。前述のように1~2ワードで検索するユーザーが大半を占めるため、『家電』関連のカテゴリなのか、『書籍』関連のカテゴリなのか、カテゴリ指定で絞り込めるようにしておかないとユーザーが求める情報を見つけづらくなってしまう。
FAST Search Server for SharePointの場合、“最新版の製品を優先的に上位表示する”、“カテゴリ分類などのナビゲーションを加えて絞り込みやすくする” といったことを実現する機能が備わっている。こうしたニーズは多いようで、「検索結果のチューニングと、カテゴリ分類などのナビゲーションを加えることによるユーザビリティの向上。これら機能に関するお客様からのお問い合わせが、最近非常に増えてきています」と延原氏は話す。
見つけてほしい情報を企業側から提案する検索に
サイト内検索の機能を手軽に導入するため、無料の検索ツールを埋め込んでいるサイトも多い。しかし、そうした検索エンジンは順位付け方法がブラックボックス。「それでは、いつ情報が反映されるのか、どういう順序で反映されるかなど、自社の商品売上に関わるものを他社任せにしてしまうことになります。こうした順位付けのロジックを明確に定義し、チューニングして操作できるようになるのが、検索基盤導入の大きなメリットと言えます」と延原氏は語る。
前述のような、最新版の製品を上位に表示する、あるいは在庫切れとなった製品は在庫のある製品よりも下位に表示する、特定ワードでの検索時には注力中の製品を訴求するバナーを表示する、検索窓に入力されたキーワードに関連した商品を候補として表示するなど、FAST Search Server for SharePointで実現できることは数多い。
「サイト内検索で望むような検索結果を表示できている企業がどれくらいあるでしょうか。お客様に見つけてほしい情報ならば、お客様にがんばって見つけ出してもらうのではなく、企業側から提案する必要があるのではないかと考えます」(延原氏)
先に触れた機能以外に、類義語の設定などにも対応。略称や通称名で検索されても、該当商品のページがヒットするように設定することもできる。
しかも、そうした検索結果のチューニングをエンジニアに依頼する必要がない。チューニング作業はFAST Search Server for SharePointのWeb管理画面から操作可能。検索クエリをチェックして、検索結果ページからの離脱を減らし、CVR向上につなげる施策をサイト担当者側でコントロールできるようになっているのだ。
大規模サイトから支持される拡張性、複数サイトの横断検索にも対応
サイト内検索の利便性を向上させるためのツールは複数の企業から提供されてはいるが、FAST Search Server for SharePointは特に大規模サイトでの採用・運用実績が多い。前述の柔軟なカスタマイズ性や安定性などが、大規模な検索クエリが発生するサイトから特に支持されている要因だ。
「スケールアウトはFAST Search Server for SharePointが得意にするところ。サーバ台数を増やしていくことで、検索速度を向上できます。さらに扱えるアイテム数も多く、10億アイテムまで大丈夫です」(延原氏)
また、FAST Search Server for SharePointには複数のサイトを横断して検索する機能も備わっている。製品・サービスごとに独自ドメインで運用している企業もあることだろう。そうしたケースでは、課金形式がドメイン単位だと費用がかさんでしまうが、FAST Search Server for SharePointの料金体系はサーバ台数による課金。強みとする機能を活かしやすい料金体系になっている。
SharePoint + FAST Searchで検索結果をパーソナライズ
「FAST Search Server 2010 for SharePoint」という名称から分かるように、同製品はMicrosoft SharePoint 2010ファミリーに属する検索基盤。SharePointは、もともと社内の情報共有の効率化を促すプラットフォームとして発展してきた経緯から、ユーザー権限ごとに表示する情報をコントロールする認証機能を標準で備えている。そのSharePointの強みを活かすことで、より高度な検索体験をサイト来訪者に提供することも実現可能だという。
「FAST Search Server for SharePointはユーザーの属性によって検索結果を変えることができます。例えば、OpenIDに対応したFacebookアカウントでユーザーにログインしてもらいます。すると、Facebookに記載されている年齢や性別によって検索結果ページを出し分けることができるようになるわけです。女性ユーザーに対して、男性用の製品ページを検索結果の上位に表示させても仕方ありませんよね。訪問者の属性に応じて動的に表示するコンテンツを変えていくことで、さらに利便性を高めることができるのです」(延原氏)
サイト内検索は基盤になるもの ― SEOやLPOと同じレベルで取り組むべき
冒頭で取り上げたサイトユーザビリティ調査が示しているように、サイト内検索を疎かにしてしまっている企業は、あまりにも多い。そんな現状に対して、ユーザーが不満を抱いてしまっているのも先に触れたとおりだ。それだけに、「サイト内検索は基盤になるもの。ユーザーの利便性を考えるならサイト内検索を改善することは避けられなくなっています」と延原氏は訴える。
取り掛かりやすく効果も計測しやすいSEOやリスティング広告の最適化を優先したい気持ちは分かるが、それだけでは伸び悩みを感じてしまっている企業も多くなっているのではないだろうか。SEOやリスティング広告で新規ユーザーを集めてきても、「目的の情報がそのページには見つからなかった」「ほかの情報も探してみたい」と思ったユーザーはサイト内検索などを使って深く情報を探ろうとするはず。そんな時に、受け皿となるサイト内検索に穴があり、取り漏らしを増やしていては意味がない。むしろ、新規ユーザーに不快な思いをさせては、今後のブランディングを考えると、マイナスにもなりかねない。
SEOなどの集客施策と受け皿となるサイトのユーザビリティは、パフォーマンスを改善するうえで両輪となるもの。そのうちの後者、ユーザーに快適なユーザビリティを提供するためには、手付かずのまま残してしまっている企業が多いサイト内検索という基盤にテコ入れをするべきなのだろう。