世界的なカードゲーム設計者が示す「ゲームに必要な10のこと」
では具体的にソーシャルゲームからどのように学べばよいのでしょうか。ソーシャルゲームは、多くのユーザーが継続的に遊んでいる人気タイトルがある一方で、一度アクセスしてもすぐにやめてしまうようなつまらないものもあります。ソーシャルゲームは無料で始められるため、優良ゲームかどうかは会員数だけでは測れません。下手なゲームから学ぼうとすると、時間の無駄だというだけでなく、誤った理解をしかねないので注意が必要です。
そこで、1993年に発売された世界初のトレーディングカードゲーム「Magic: The Gathering」のゲームデザイナーであるMark Rosewater氏の「ゲームに必要な10のこと(Ten Things Every Game Needs)」をもとに、参考になるゲームかどうかを判断してみましょう。
「ゲームに必要な10のこと」は、Mark Rosewater氏が11歳の娘のクラスでゲームデザインの基礎を教えるためにまとめたものです。今回は例として、mobageで提供されている「レイトン教授ロワイヤル」を例に検証したいと思います。
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1. A Goal or Goals:目標(1つでも複数でも)
レイトン教授ロワイヤルの目標は、主に2つあります。(ソーシャルゲームなので完全なゴールはゲームのサービス終了までありません。)目標は「ひとりで探索」でストーリーを進めながらいろんなキャラクターのレベルを上げることと、「みんなで推理」で推理ゲームをしながらコインやデコを集めることです。
2. Rules:ルール
ユーザーレベル・キャラレベル・スキルレベルの違い、刑事・犯人・市民の役割など、一見複雑なルールがいろいろありますが、チュートリアルを進めながら自然とゲームの世界を理解できるよう設計されています。
3. Interaction:相互作用/プレイヤー同士のかかわり
フォロー/フォロワーという形でユーザー同士がつながり、いいね!を押したりコメントを残したりすることで、アイテムと交換できる「レイトンpt」がもらえます。
4. A Catch-Up Feature:逆転要素/初心者が追いつくための手段
「スタートダッシュキャンペーン」というものが用意されており、簡単な課題を1日1つずつクリアすることで、大量のレイトンptがもらえます。これをもとにライフを回復するアイテムなどを手に入れ、通常よりも速いスピードでゲームを進められる。次の日も継続して訪問するリピート欲求にも作用している。
5. Inertia:勢い/飽きる前にやめさせる
「ひとりで探索」をするためにはライフが必要であり、消費するとアイテムで回復するか時間が経って回復するのを待たなくてはいけません。「みんなで推理」も1日5回までと決まっていて、もっと遊びたいという気持ちが残るような工夫がされています。
6. Surprise:驚き
期間限定のキャンペーンが用意されており、突然現れるボスを他のユーザーと協力しながら倒し、通常とは異なるレアアイテムなどの報酬を獲得できるようになっています。
7. Strategy:戦略
ほかのユーザーと競えるようなカスタマイズ性を用意する必要があります。レイトン教授ロワイヤルではゲームを進めていくと手に入る「キャラスキルアップの種」を使って、好きなキャラクターのステータスを強化できる要素があります。
8. Fun:楽しみ
「ひとりで探索」や「みんなで推理」で基本的なゲームのほか、ガチャで手に入れたアイテムを自分の好みで「ルーム」という空間で自由にレイアウトする楽しみも用意されています。
9. Flavor:フレイバー/物語性や世界観
レイトン教授シリーズは、ニンテンドーDSやニンテンドー3DS用のゲームソフトとして5本のタイトルが発表されており、2011年9月時点でのシリーズ全世界累計販売本数が1200万本に達している大人気ゲームです。レイトン教授が助手のルーク少年とともに様々な「ナゾ」を解きながら物語を進めていくオリジナルの世界観は、ソーシャルゲームでも引き継がれています。
10. A Hook:フック(市場に対する引き)
ディー・エヌ・エーとレベルファイブが共同開発をしたタイトルであることと、あのレイトン教授がソーシャルゲームになったことの2点が、市場に対する大きなフックとなっていたと思います。