「カワイイ!」にもいろいろある コンセプトからブレずに突き詰めよ
しかしながら、“カワイければ何でも良い”というわけではありません(このニュアンスを男性にお伝えするのはなかなか難しいかもしれませんが)。
先程述べたように、カワイイには何種類もあります。そのためゲームを開発する際は、まず今回のタイトルはどのカワイさを目指すのか、あらかじめ明確にする必要があります。これを怠ると、世界観がブレるので誰の心にも刺さりません。
例えば、今回のプロジェクトは30代女性を獲得したいので、「大人カワイイ」を目指そうと決定したとします。そのコンセプトを最後まで絶対に変えることなく、「大人カワイイ」の中身を掘り下げていきます。
ただしここで注意したいのは、「大人カワイイ」に新しい要素を肉付けするのではなく、あくまでそれを突き詰める作業だということです。雪だるま式にあれもこれもと付け足すと、全体で見た時に捉えどころのないありきたりなデザインになりがちです。
私の場合、ここがクリエイターの腕の見せ所だと思いますし、0ベースで物事を発想できる楽しい瞬間です。
「大人カワイイ」の構成要素を突き詰めていくと、以下のようなキーワードが出てくるかと思います。
- 整列した美しさ
- 色数を絞ったスタイリッシュさ
- モチーフ1つひとつには可愛らしさを
- ポイントとなるデザインの繊細さ……etc
あとは、これらの材料をゲームのテーマに沿って調理するのみです。
結局のところ、ソーシャルゲームにおけるデザイナーとは単純に絵を描く仕事ではなく、プランナー同様、目的に合わせた考察が非常に重要な仕事です。
需要に合わせて目まぐるしいスピードで画面を構築していくわけですから、当然のことだと言えます。
狙いどおりの「カワイイ!」を創る3つのポイント
カワイイはそれなりに出来上がるものではなく、狙って創るものです。女性は「カワイイ」の種類に応じたこだわりのあるデザインでないと、振り向いてはくれません。そこで、私がカワイさを表現するのに、普段実践している3つのポイントをご紹介します。
カラーパレットを作る
やはり、狙ったカワイさで世界観を形作るには、ファーストインプレッションを決める「色」は重要です。毎回、その都度のイメージをカタチにしながら、色数を絞っていきます。人の印象に残りやすいものほど、色味もシンプルにまとまっているからです。

さらに言うと、色味が煩雑なものにはセンスを感じさせません。バナー等を置くと後々嫌でも煩雑に見えてくるので、UIの背景色や画像パーツ、ボタンを配置する最初の段階ではカラーパレットに乗せたメインカラーだけで構成します。
また、カワイイ色味とは、決して白やピンク、赤、黄色といったカラーだけではありません。寧ろこれらの女性的な色味を上手く引き立てるためには、案外、渋い色を効かせる必要もあります。
話題性を用意する
例え「あのゲーム、カワイイの!」と話題にしてもらえたとしても、それがどんなゲームなのか、ひと目でわかるようなデザインでないと、それ以上口コミは広がりません。そこで私は、ゲームのアイキャッチになるキャラクターを用意することが多いです。 競合他社のゲームがノーマルなカワイさだった場合は、そこに「ゆるさ」を加えるなどして差別化し、インパクトを持たせます。
流行りを取り入れる
カワイイのヒントは雑誌・テレビ・広告などに多いため、そういった異業種のメディアから良い部分は積極的に取り入れます。ゲームをデザインする上でゲームの絵だけで分析するのは邪道だと思います。インスピレーションは至るところから湧きますし、様々なモノのデザインをゲームに融合できないか、日々ストックしていく作業は非常に大切なことだと思います。
また、「カワイイの流行」のスパイラルについて行くことも重要です。オジリナリティのあるデザインで、自ら流行りを作るのはなかなか難しいからです。今流行りの要素に、少しエッジを効かせるくらいの感覚だと、案外キャッチーなデザインになります。