ディスプレイ広告をEメールのように配信する
ここで紹介した「eMinder」プログラムは、データベースを活用しディスプレイ広告配信を最適化した最もシンプルな例だ。その他にも顧客のステイタスやエンゲージメント状況による広告クリエイティブの出し分けや、メールに反応しない顧客に対するディスプレイ広告の配信など、いくつかの事例が発表された。そして、次のようなディスプレイ広告活用のヒントも紹介された。
例えば…
- 全てのEメールのコミュニケーションシナリオにディスプレイ広告を加えてみる
- Eメールに反応していないユーザーにディスプレイ広告を配信する
- オプトインしていないユーザーにディスプレイ広告を配信する
他のジェネラルセッションと同様、このセッションの中でも強調されたのは、全てのタッチポイントで一貫したコミュニケーションを設計し、その一つとしてディスプレイ広告を活用するという考え方である。


顧客とのリレーションシップを強化するために、ディスプレイ広告もCRMの視点から活用する。これがResponsysの考える「ディスプレイ広告の未来」だといえる。
リレーションシップ・リターゲティング、その他の導入事例
その後のブレイクアウトセッションではMetLife、L'Occitane StubHubの各社からディスプレイ広告による「リレーションシップ・リターゲティング」を自社のクロスチャネル・マーケティング・ミックスに取り入れた事例が報告された。

各社ともに既存のコミュニケーションプログラムの一部にディスプレイ広告による「リレーションシップ・リターゲティング」を取り入れて成功している。
印象的だったのは、各社が口を揃えて「まず小さくテストして、効果的なら拡大すればいいのだから導入は比較的簡単」とコメントしていたこと。常に新しいプログラムをテストして改良するPDCAサイクルの中に「リレーションシップ・リターゲティング」も自然に取り込まれていた感じだった。
もう一つ印象的だったのはパネリストへの質問として「戦略の立案や決定は誰が(どこの部署が)どうやってしたのか」「リレーションシップ・リターゲティングを運用しようとするとマーケティングチーム内でCRM担当とオンライン広告担当などの共同作業が必要なのではないか」「予算はどこから持ってきたのか」など非常に現実的な運用上の疑問が次々に挙げられたことである。
アメリカでは企業内の役割分担が日本よりも明確に定義されているために、クロスファンクショナルな施策にはそれに対応する組織運営を必要とする。運用上の疑問が挙がるということは、企業のデジタルマーケティングを担当している参加者が、現実的な課題としてこのテーマを捉えていることを示唆している。まだまだ新しい手法だが、効果的ならすぐにでも取り入れたいという姿勢を感じた。