「Googleアナリティクス Premium」はツールベンダーの脅威となるのか
押久保:このあたりで少しツールの話をうかがいたいと思います。欧米では、Googleアナリティクスの有償サービス「Googleアナリティクス Premium」が出てきました(※)。料金は年間15万ドル(約1,200万円)です。これはツールベンダーにとって脅威になるのでしょうか。
小川:「Googleアナリティクス Premium」は、サポートや問い合わせ・保証などがしっかりと得られるというところが魅力ですね。
清水:GoogleアナリティクスはGoogleアナリティクスってことです。
小川:そう。“Premium”が付いたからって、超ハイスペック機能になってやりたい放題になるっていうことでもないでしょうし。でも、利用者がたくさんいる企業にとっては嬉しいと思います。これまで自分たちで行っていたサポートや問い合わせを正式にサポートしていただけるので。
清水:SiteCatalystと大きく違うのは、生データをエクスポートできないこと、外部のデータをインポートできないことの2点。ビッグデータ系のデータ統合や分析としては弱いので、Adobe製品を使いこなしているUSの顧客が乗り換えることは少ないと思います。
小川:なるほど、どちらが良いというわけではなく、それぞれ方向性が違うということですね。
清水:両方入れて使うケースはあるかもしれないですけど。
小川:それはあるでしょうね。普段のモニタリングはGoogleアナリティクスで見て、分析は別のツールを使ってさらに詳細を分析したり、ログデータをダウンロードしてBIツールで気づきを得たり……という使い方をすればいいのかなと。
清水:棲み分けできますよね。
小川:USの料金を考えると、大企業にとってめちゃくちゃ高いかっていうとそうでもない。コストで見たら現在導入している有料アクセス解析ツールより、お得なケースも多いかと思います。Premiumの料金は現在利用しているGoogle アナリティクスに対しての、安心やサポートのためのコストですよね。
清水:Adobe系の製品は、とにかく統合を進めています。アクセス解析は一部でしかなく、A/Bテスト、多変量解析、ターゲティング、動的コンテンツ管理、タグ管理、ソーシャル測定、レコメンド、広告管理と、全部が連携してデジタルマーケターを支援していく。Adobeはそっちの方向にがんがん進んでますね。
小川:Google アナリティクス Premiumがどこと競合するかっていうのも難しい。逆にAdobeよりも、月数万円や数十万円の有料アクセス解析ツールのほうが別の観点で脅威として感じているかもしれない。もちろん、まだ日本ではサービスが始まってないので未知数のところはありますけど。
清水:でも、やり始めたら絶対苦労すると思いますよGoogleは。無料だとみんな許しちゃうじゃないですか。有料だと期待値がぐっと上がるので。「1,000万円以上払ってるんだから、ウチが言ったことを直せ!」みたいに。
小川:清水さん、体験されてますからね。言う側も言われる側も(笑)。
Google アナリティクス Premiumの情報は、以下のページで公開されています。
解析する人が偉くなればいいじゃん
押久保:そろそろまとめに入りたいと思うのですが、日本のマーケターの人たちはこれから考え方をどう変えていけばいいのでしょうか。「データはアクションするためのもの」という話がありましたけど、そういう視点に変わっていくことが重要なのかなという感じがするんですけど。
小川:この間、清水さんが話をされた講演(アクセス解析イニシアチブ主催「Marketing Optimization Summit サンフランシスコ報告会」)で、「偉くなっちゃえばいいじゃん」っていう発言があって、それってすごいなと思ったんです。われわれ解析をする人がCMOになればいいと。
清水:USは、もう歴史が長いので、10年くらい前に現場でガリガリやってた人たちが事業部長になったり、転職して大企業に入ったり。日本って、解析担当者が現場主導で草の根的に「解析ってこんなにすごいんですよ」とがんばるんだけど、その人がなかなか評価されなかったりする。
小川:我々もずっと同じことを言ってるんです。「上司が理解してくれない」とか「伝えてもわかってもらえない、どうしたらわかってくれるんだ」と。でも要するに「自分たちが理解する側になればいいんだ」ってことですよ。幸いにもうちの部署の上司の皆様は理解があるので、自由にやらせていただいておりますが(笑)。
押久保:上の人たちが理解できないなら、結果を出して自分たちが偉くなればいいということですね。
小川:そうですね。清水さんはじめ、アクセス解析や分析に携わっている方が、経営の判断に入れるようになるといいですよね。ただ、私はそういった人たちをサポートする現場の人でもいたいですが。
清水:私は組織作り、設計、実装、分析、サポートと一通り経験したので、もう現場を離れました。ツールが良くなればもっと普及するだろうと思ったので、今USで活動中です。