解析する人って、解析で閉じちゃってる
清水:日本では、アクセス解析の目的は「過去の理解」、つまり終わった施策(マーケティングやコンテンツなど)の効果を結果として知るところでとどまってしまいがちですよね。USの場合は「効果測定」はあまり重視されていなくて、「解析することによってアプローチすべき顧客のリストを作成し、ターゲティング可能にすること」が重視されているようです。
しかも、そのリストにプライオリティが付いていることが重要です。営業が上から順番に電話をかけるなどしてアプローチしてもいいし、サイト上であれば、セグメントを切ってコンテンツを出し分けするなどのアクションが可能になる。解析のゴールはアクションにつなげること。「アクセス解析はどう活用したらいいんでしょう?」なんて話はとっくに終わっています。
押久保:清水さんがMarkeZineに寄稿してくださったレポートで、B2B企業のコンバージョンが100倍になりましたという事例がありましたけど、まさにあれですね。
清水:あの事例の場合、解析チームがデータをつくってそのリストを営業に渡すと営業の成績が上がるので、解析の意義がきちんと組織の中で評価され認知されるんです。解析する人って、解析で閉じちゃうことが多いんですけど、もっと組織の中でうまくやればいいのにと思います。
押久保:営業の人たちに、「あなたたちの売上が上がるためのものなんですよ」とプレゼンして、伝えなきゃダメってことですね。
清水:そしたら、もっと上を巻き込んで体制を変えていって、上からトップダウンでやることもできると思う。
押久保:……という話を私はこの2、3年くらいずっと聞いているんですけど(笑)。それが有効なのはわかるんですが、実態としてそれが実行できているところってないんじゃないかなと思うんです。
小川:アクセス解析が何に使われるかっていうと、結局モニタリングに使われるんですよね。毎月「増えた」「減った」と報告する。そのレベルでやってる限りは、アクセス解析の価値というのが出てこないわけです。健康診断してるだけですから。
押久保:アクセス解析の価値づけがきちんとできていないために、ものごとが進んでいかないということなんでしょうか?
小川:でもね、その価値づけっていうのも難しいなと思うんです。ただモニタリングしてるだけだと、何も引き出せない。「データからどう気づきを見つけるのか」「施策から考えて、どういうデータを分析する必要があるのか」、そういう視点が大事だと思う。
押久保:そこを、もうすこし説明していただけますか?
小川:モニタリングって、ツールのレポート機能ありきなんです。このレポートからこれを出そう、あるものでこれをつくろう、「はい、できました」となるんですけど、施策を行うのであれば、その施策にあったデータが本来は必要になるはずなんです。そもそもほしいデータを取れていないんだったら解析のしようがない。そして、それはアクセス解析ツールだけにとらわれる必要はないんです。
そういう発想、時間、スキル、役割っていうものが今あまりないのかなっていう気がしますね。
清水:普通にデフォルトでとれるデータって、全然意味ないですもんね。「そんなの見るな!」と。(一同爆笑)
押久保:そうなんですか(笑)。
小川:いや、おっしゃるとおりで。社内で「ウェブサイトについて何を知りたいですか」「どういうふうに変えていきたいですか」と聞いていくと、解析ツールとは関係ない要望が出てくるはずなんです。アクセス解析を行う人のほうが、より「現在取得できているデータ」にとらわれていると思う。多様な情報入手方法とその制限を理解する必要がありますね。私もついつい、「アクセス解析」で考えてしまうので。
