データオリエンテッドな企業文化
有園:組織については社内政治も関連していて難しい局面がある。宣伝部やマーケティング部の結果がきちんと数値化されて出てくることに対して、危惧する声が役員から出ることさえある。リクルートでは、そういうデータオリエンテッドな文化というのは、どのような状況なのか。
小川:やはりまだまだ難しい。最後の施策をやるところでつまづいてしまう。「その施策をやるべきだ」というロジックを施策担当者が上司に説明できないと動かない。あるバナー広告を出していたとして、そこはうちの取引の関係上すこしお安く買っているとか、取引上そこは出し続けなければいけないという事情がある。ここはできない、ここはできない…となっていくと、残るのは限られてくる。
我々がやることは、できる範囲からとりあえずやって実績をつくって、説得していくこと。これしかない。施策をやらない=分析にかけたお金のムダ。なので、施策をやってなんとか効果を出して、かけたお金をとり返す。そうやって初めて聞く耳をもってくれるのかなと思う。「そんなこと言ってないで、やらせろよ」ではダメで、少しずつ規模は小さいけどやり続けることが大事。

アメリカより時間はかかるが、日本企業の適応力はバカにできない
有園:横山さんは大企業のコンサルをされているが、日本の企業の状況は?
横山:ここ10年くらい、企業の中でデジタルに強い人はすごく育っている。そのスキルは属人化する傾向もあったが、横断的にナレッジ教育しようとしている企業もある。社内のいろんな組織から集まってボトムアップでやっても、それは必要条件であって十分条件ではない。日本の企業では、ボトムアップとトップダウンがものの見事に合わないとスイッチが押せないという非常に難しい状況がある。
経営判断を客観的な数字でもってやるというのはかなり文化的に難しいが、その土壌をつくっていかなければならないし、それをやろうという気運もある。そのプロセスはアメリカより時間はかかるかもしれないが、必ずそういう方向にいくと思う。
大企業でもそれをボトムアップでやろうとしている企業はある。日本の企業の現場の適応力はバカにしたものではなくて、すごくある。ありすぎるくらいにある。適応過剰だったりする(笑)。ソーシャルメディアの対応など過剰なまでに現場はやっているが経営側はわかってない。このギャップが問題。ただ、僕と同じくらいの年齢の人たちが社長になり始めているので、もうそろそろかなと思っている。